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本庶さんノーベル賞

2018年10月3日
◆第4のがん治療に道開いた◆

 今年のノーベル医学生理学賞は、がんの新たな薬の開発に道を開く発見をした本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大特別教授とジェームズ・アリソン米テキサス大教授の2人に授与されることが決まった。本庶さんたちは、開発の鍵となるタンパク質を発見。それを土台に、化学療法、外科手術、放射線治療に続く第4のがん治療として「がん免疫療法」が確立された。世界保健機関(WHO)によると、世界では6人に1人が、がんのために亡くなっている。がんとの闘いはまだまだ続く。研究者の奮闘を応援したい。

鍵になる免疫の働き

 がんはどうしてできるのか。体の細胞のDNAは、酸素や放射線、さまざまな発がん物質、ウイルス感染、たばこなどによって日々傷ついている。傷を修復する仕組みはあるものの見逃しはあり、傷が蓄積されると、際限なく増殖するがん細胞が生まれやすくなる。

 免疫システムは、がん細胞を異物として認識し攻撃するのだが、うまくいかないこともある。本庶さんたちが見つけたのは、がん細胞が免疫システムの攻撃をかわすために利用しているタンパク質だった。

 本庶さんの場合、発見は全くの偶然だったという。免疫を担うリンパ球の膜にある「PD1」というタンパク質の働きを探る中で、それがリンパ球の過度の活性化を抑えるブレーキの役目をしていることを突き止めた。

 がん細胞は表面に「PDL1」というタンパク質を出してPD1に働き掛け、リンパ球の攻撃にブレーキをかけていたのだ。このブレーキを薬で壊してやれば、リンパ球は活性化し、がん細胞を攻撃するようになる。アリソン教授が見つけた「CTLA4」というタンパク質も同じようにブレーキ役として働く。

深刻な高価格の問題

 本庶さんの発見から生まれた「抗PD1抗体」やアリソン教授の発見を基にした「抗CTLA4抗体」という薬は、皮膚がんの一種、メラノーマなどの治療に良好な成績を上げている。これらの薬には、多くの種類のがんに効果があることや、副作用が比較的少ないといった特徴がある半面、効きにくい患者が一定程度存在する、価格が高いといった問題もある。

 効きにくい人に対しては、従来の化学療法や放射線治療を組み合わせる方法が検討されており、効くかどうかを薬の投与前に判定する技術の研究も進んでいる。

 価格が高いという問題は深刻だ。がんによる死亡の7割は中低所得国が占めている。高額なままでは、薬の恩恵を多くの人が受けられない。先進国であっても、治療を受けられない人が出てくることになる。

 現在、さまざまな免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験が進められており、この活況は当分続きそうだ。誰もが使うことのできる効果的な治療法が生まれることを期待したい。

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