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日米物品貿易協定

2018年9月28日
◆理不尽な要求は回避したい◆

 日本の通商政策は貿易ルールや規範については多国間で協議・決定し、国際的に広範な理解を得ることがこれまでの基本方針だった。だが安倍晋三首相は今回のトランプ米大統領との首脳会談で、2国間による「日米物品貿易協定(TAG)」の締結に向け、関税や市場開放などに関する交渉に入ることで合意した。

 安倍首相は首脳会談に先立つ国連総会での一般討論演説で「日本は自由貿易の旗手だ」と強調した。貿易問題の解決のためには制裁関税を発動するのではなく、世界貿易機関(WTO)のルールに沿った対応を取るべきだとトランプ氏を戒めることが理想だったが、現実は厳しかった。

注意すべき農業分野

 11月の米中間選挙に向けて成果を強調したい大統領に押し切られた形だ。日本にとっては、自動車への追加関税を回避するためのやむを得ない選択だったのかもしれないが、交渉次第では将来に禍根を残す決断になる恐れもある。

 ここを突破口にして、米国が理不尽な要求を突きつけてくる事態は回避するよう尽くすのが当然だ。「アリの一穴」にしてはならない。

 自動車と並び注目されるのが農業分野の扱い。米国はさらなる市場開放を迫ってくる可能性がある。農業を主要産業とする本県としては、安易な妥協をすることがないように訴えたい。

 米国は、いまだに各国が大きく依存する巨大市場を持つほか、強大な軍事力で各地域の安全保障政策を支えている。「貿易戦争」とも形容されるようになった中国との制裁関税の応酬、極めて不利な条件を韓国に強いた自由貿易協定(FTA)改定などを見ていると、米国が力を背景に相手国を屈服させようとしているのではないかと疑わざるを得ない。

EUとの共闘強化を

 中国との応酬は、知的財産権侵害や軍事技術覇権を争う大国同士のせめぎ合いの要素が強いが、米韓FTAの場合は、北朝鮮問題が影響したとの指摘もある。

 日本は、安倍首相が自民党総裁に連続3選を果たし、歴代最長政権をうかがう情勢だが、外交・安保問題は、各国との協力・協調が不可欠であり、特に同盟国である米国への期待が大きい。

 交渉は年明けから始まる見込みだが、ディール(取引)を多用するトランプ大統領が主導するだけに貿易・通商以外の要素が絡んでくる恐れも排除できない。こうした事態を防ぐために米国が抱く不平・不満に耳を傾けることも忘れてはならない。

 米国が最も問題視している中国による知財問題や自国企業への不適切な補助金などについては、日本も欧州連合(EU)も同様の不満を抱えている。貿易担当相間で協議を始めたWTO改革と合わせて、ここでの共闘のさらなる強化を米国に働き掛ける戦略も考えたい。

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