ホーム 社説

辺野古承認の撤回

2018年9月12日
◆「移設」本当に必要か検証を◆

 沖縄県は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した。8月8日に急逝した翁長雄志知事が亡くなる直前に撤回方針を表明し、遺志を貫いた形だ。これにより移設工事は即時中断となり、政府は効力停止の申し立てなど法的な対抗措置を取る方針だ。政府と県は再び法廷闘争に入ることになる。後継を決める県知事選は30日投開票される。その前哨戦として関心を集めた名護市議選(定数26)は9日投開票され、移設反対派が15人当選。今後の移設計画の進め方にも影響しそうだ。

不信感が招いた事態

 撤回は、本来ならば選挙後に新しい知事が判断すべきだろう。だが、政府は埋め立ての土砂投入を8月17日に行うと通知。荒天を理由に延期したが、投入に踏み切る構えは崩していない。埋め立て海域の原状回復が不可能となる土砂の投入を止めるには、投入前に撤回する必要があった。政府と県が相手の出方に不信感を募らせた揚げ句、こうした事態に至った。

 県知事選は、翁長氏の後継として移設反対を訴える自由党衆院議員の玉城デニー氏と、安倍政権が支援する前宜野湾市長、佐喜真淳氏との事実上の一騎打ちとなる。激しい選挙戦が想定され、どちらが当選してもしこりが残るだろう。

 県民を分断する形で基地建設を進めていいのか。対立を断つには安保政策上、辺野古移設が本当に必要なのかの再検証が必要だ。「辺野古移設が唯一の解決策」という硬直した姿勢を改め、打開の道を探るよう政府に求めたい。

 謝花喜一郎副知事は、防衛局の工事に違反行為があり、行政指導をしても是正しなかったと指摘し、「違法状態を放置できないとの行政の原理の観点」から判断したと説明。防衛局は知事選後まで撤回を延期するよう要請していた。土砂投入の構えをとり続けたのでは、県の不信を解くことはできないだろう。

県民の選択尊重せよ

 玉城氏は「翁長氏の遺志を引き継ぐ」と強調、県による承認撤回を支持するとしている。保守と革新の壁を越えた「オール沖縄」の枠組みをアピールするが、野党各党が支援する態勢は革新色が強くなるだろう。もともと自民党幹部だった翁長氏のように、保守層の支持を得られるかが課題だ。

 佐喜真氏は「普天間飛行場の危険性除去と早期返還」を訴え、国との関係改善を主張する。辺野古移設への賛否は明確にしていない。「争点隠し」の戦略ではないか。そもそも普天間飛行場について、政府は2019年2月までの運用停止を県に約束している。早期返還は県民の一致した要求であり、その先の辺野古移設への賛否を明確にすべきだ。

 選挙戦で、与野党は国政選挙並みの支援態勢を取る構えだ。問われるのは沖縄の将来像をどう描くかである。何よりも尊重すべきは県民の選択である。

このほかの記事

過去の記事(月別)