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日銀の金融政策

2018年8月4日
◆物価2%上昇にこだわるな◆

 日銀は金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の副作用を軽減するため、従来の金融政策を修正することを決定した。長期金利の一定幅の上昇を容認し、マイナス金利の適用も縮小する。大規模金融緩和が始まって5年、物価の動きは鈍く、2%の物価上昇へ導く作戦は限界を露呈しつつある。2%目標は中長期の目標として遠景に退け、1%を超えて安定した段階で政策の見直しを検討することも考えていいのではないか。

低金利で苦しむ地銀

 日銀の今の金融緩和は2013年4月に始まり、世に出回るお金の量を2倍、3倍と増やしたが理論通りにはいかなかった。

 賃金は伸び悩んでいるものの企業業績は高水準を維持、雇用情勢も特に深刻な問題はない。物価上昇率が2%に達していなくても日本経済は安定し、少なくとも物価が持続的に下落し経済活動を萎縮させるデフレスパイラルからは脱している。それでも日銀は、副作用には一定の配慮をしながら大規模な金融緩和を続け、あくまでも2%クリアを目指すという。

 低金利で金融機関は体力をすり減らしてきた。優良な融資先が少なく、運用のノウハウも乏しい地域金融機関の経営は特に深刻だ。本業で赤字に陥る地銀も多い。金融システムの安定という観点からすれば、問題が多いことは日銀も認めざるを得ないだろう。

 さらに財政規律が弛緩(しかん)してしまっていることは極めて憂慮すべき問題だ。政府が18年度に発行する国債は償還資金を調達する借換債を含め約150兆円。これだけの国債が市場に押し寄せれば、通常は金利が上昇、利払い費が増えて発行者である政府に抑制を促す。しかし、日銀が金融緩和で大量に購入するため、金利上昇で「警告」を発する市場本来の機能が失われてしまった。

新興国との競争激化

 物価が上昇しないことは今の日本経済にとって一概に有害と言えるのか。日銀は、再びデフレスパイラルに引き戻される危険がまだあるから、さらに上げなければならないと見ているのだろう。しかし景気拡大の中で説得力があるのか。政策の出発点を現状から照らして点検する必要がある。

 仮に上げなければならないとしても、現在の金融政策は有効なのか疑問が残る。日銀は物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣習が根強く残っていることなどが、物価上昇を阻む主因と分析している。それ以上に影響が大きいのは、グローバル化の進展による新興国との競争激化や、ネット・デジタル経済の拡大だろう。

 政府が単純労働分野での外国人労働者受け入れに政策転換するほど深刻な人手不足の中でも物価上昇が鈍い。従来の常識ではなかなか考えられない事態だ。さまざまな要因が絡まっているのだろうが、新たな経済の潮流に政策が追いついていないのではないかという不安に駆られる。

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