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本県の強制不妊

2018年8月1日
◆実態解明し救済の道を開け◆

 旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに不妊手術が強制された問題で、県内でも不妊手術が実施されたとみられる男女37人の個人名が記された資料が見つかった=写真。県が55(昭和30)年~96年ごろに作成したもの。昨年9月時点で一部の県職員が資料を確認したが、組織的に情報が共有されず、結果的に公表や国、県議会への報告が遅れた。資料管理と情報共有の点から再度検証し、被害者の実態把握を速やかに進めるために、他の該当資料の有無を徹底して調査してほしい。

資料の発見が遅れる

 県の説明によると、昨年9、11月に外部から県に関連資料の開示と閲覧の請求があり、担当課職員が資料を確認した。しかし、資料の重要性が分からず職場に報告をせず、11月にはさらに別の職員が「秘匿性の高い個人情報」と独自に判断して検索システムのリストから外した。今年6月、県総務課が調査を始めるまで誰も閲覧できない状態が続き、県はこの間、国の調査や県議会に対して「個人が特定できる資料は見つかっていない」と回答していた。

 37人(当時14~42歳)のうち、少なくとも男性2人、女性23人が本人の同意なく不妊手術を強制されていた。県優生保護審査会から手術決定の判断を下された11人は実際に手術を受けたかの記載はなかったという。県衛生統計年報のまとめでは、県内では49~87年に283件の強制不妊手術があったとされる。依然、多くの被害者名が判明していないことになる。

 どんな経緯で手術を受けることになったのか、手術後どんな人生を送ったのか。個人名が把握できないということは、被害者の人生や思いが放置されたままということだ。障害者らへの強制不妊手術は非人道的で、重大な人権侵害である。県は医療機関や障害児者施設に働き掛けるなど、主体的に調査に乗り出すべきだ。

被害者の高齢化進む

 37人の個人名が記載された資料が見つかり、負の歴史が県内にも存在していたことがより明確になった。すでに亡くなった被害者もいれば、声を上げることができない人も少なからずいるだろう。被害者や証言者の高齢化、証拠資料の廃棄が進んでいる。時を経ての事実解明は困難を極める。

 共同通信の全国調査で7月、個人名が記載された資料が32都道府県(本県は含まれていない)に5090人分現存していることが確認された。しかし強制手術全体の3割にすぎない。過去の誤った国策を繰り返さないため、法改正から20年以上も放置されてきた被害者らの思いを受け止めるためにも、現存資料の保全と掘り起こしの徹底が必要だ。

 今年に入り宮城、東京、熊本などで被害者らが国に損害賠償を求めた提訴が相次ぎ、5月には190人規模の全国被害弁護団が結成された。実態解明に努め、救済の道につなげなくてはならない。

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