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安保政策

2018年7月12日
◆巨額の装備導入必要なのか◆

 米朝首脳会談の実現で北朝鮮を巡る情勢が緊張緩和に向かう中、日本の安全保障政策も再構築を迫られている。政府は北朝鮮が弾道ミサイルを発射する可能性は低下したとして自衛隊による警戒態勢を一部緩和、2018年度に予定していた住民避難訓練も中止した。だが、弾道ミサイル防衛の強化策として計画する地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の導入方針は変えていない。

良好な関係構築せよ

 北朝鮮情勢は暗転する可能性もあり、備えは必要だ。しかし関係各国が緊張緩和に向けて動く中で、巨額の費用が必要な固定的な装備の導入を再検討もせずに進めるのは妥当だろうか。政府が沖縄県名護市辺野古で進める米軍の基地建設にも同様の疑問を抱く。

 トランプ米大統領が在韓米軍の縮小・撤退に言及し、安保情勢が大きく変わる可能性が出ている。軍備拡張を続ける中国への対応も課題だが、限られた予算の中で装備の費用対効果も考慮し、安保体制の整備を進めるべきだ。外交による各国との良好な関係構築を基本に置いた、戦略的で柔軟な構想が求められる。

 トランプ大統領と金(キム)正恩(ジョンウン)朝鮮労働党委員長が署名した共同声明は、北朝鮮の「安全の保証」を約束した。安保上の脅威は相手の「能力」と「意図」の掛け算とされる。北朝鮮は弾道ミサイル能力は持つが、共同声明に反する「意図」は低下したとみるべきだろう。

 菅義偉官房長官も「安保上の厳しい状況は緩和された」と言明、政府は住民避難訓練を取りやめた。では、なぜ地上型イージスの配備は予定通りなのか。

 政府が23年度に秋田、山口両県に2基の導入を目指す地上型イージスは、海上のイージス艦と同様に弾道ミサイルを迎撃する米国製システムだが、1基当たり1千億円弱もする巨額な装備品だ。

米国製購入が圧力に

 小野寺五典防衛相が先日行った両県への説明に対し、秋田県の佐竹敬久知事は住民避難訓練の中止に絡めて「地上型イージスの配備が最適かも検証し直すべきだ」と指摘した。当然だろう。

 小野寺防衛相は「北朝鮮は弾道ミサイルを一つも廃棄していない」と強調するが、説得力を欠く。トランプ大統領は米国製装備品の購入を日本に求めており、その一環だとの説明では地元の理解は得られない。

 朝鮮半島から米軍が退いた場合の在日米軍や自衛隊の在り方も課題になる。ただ、基本はこの地域に対話と協調の関係を築く外交努力であるべきだ。焦点の対中関係も改善の局面に入っている。

 政府が年末に予定する新たな「防衛計画の大綱」の策定に向けて、自民党は敵基地反撃能力の保有検討や防衛費の大幅増などを提言した。だが軍拡競争に陥るべきではない。危機をあおることなく、冷静な分析に基づいた体制整備の検討を求めたい。

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