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日本の宇宙探査

2018年7月4日
◆科学と技術のバランス取れ◆

 探査機はやぶさ2が目標としていた小惑星「りゅうぐう」の20キロ上空に到着した。2014年12月の打ち上げから3年半、32億キロに及ぶ宇宙空間の旅は、ここまでほぼ順調だった。今後1年半、近くにとどまって観測を続け、今年秋以降に計3回着陸し、表面や内部の岩石を採取、20年末に地球に戻る計画だ。初代はやぶさは故障続きで微粒子しか採取できなかった。2代目の成功に期待が高まる。

少ない予算でも成果

 はやぶさ2の計画が始まったのは05年12月。初代が小惑星イトカワに着陸後、地球との通信が途絶え、行方不明になっていた時期で、科学的意義が明確でない段階での異例のスタートだった。その後、イトカワとは違い、生命に必須の有機物や水を含む鉱物があるタイプの小惑星からの岩石採取が目標に据えられた。

 日本の宇宙探査は欧米に比べ圧倒的に少ない予算で、第一級の科学の成果を上げてきた。例えば金星探査機「あかつき」の観測データは世界の科学者に公開され、金星の謎を解く研究を強力に後押ししている。金星はゆっくり自転しているのに、大気が秒速100メートルの猛スピードで金星を回っているのはなぜか。金星の自転速度が変化するのはなぜか。そんな長年の謎が、あかつきのデータを基に解き明かされつつある。

 20年度に打ち上げを予定し月面着陸を目指す無人探査機「SLIM」は、日本がまだ達成できていない「重力の強い天体に着陸する技術」の実現が主目的であり、科学的な意義は乏しい。火星の衛星からの岩石採取を目指す探査機「MMX」は科学の目標はあるものの、火星の重力の影響下で着陸し離陸するという、今の実力からするとかなり難しい技術に挑戦することになる。

貧弱な地上システム

 世界をリードする科学の目標と、それを達成するための技術が相まって進められてきた日本の宇宙探査は今、そうしたバランスを失いつつある。

 探査を支える地上のシステムも相変わらず貧弱だ。探査機と通信するための大型アンテナは長野県にある1基のみ。はやぶさ2とあかつきは、この先1年ほど地球から同じ方向に見えるため、あかつきのためにこのアンテナを使うことができない。年内は金星が地球に近いため鹿児島県にある小さめのアンテナでなんとか間に合うが、来年は米航空宇宙局(NASA)の支援を受けざるを得ない。宇宙探査を本格的に進めるのなら、大型アンテナを最低1基は海外に建設する必要がある。

 宇宙探査は着実に経験を重ねながら進めるものだ。一足飛びにより高いレベルに到達できるものではない。問題の根底には経済への波及効果だけを求め長期的視点を欠く、今の科学技術政策がある。科学と技術の両輪をバランス良く回してきた宇宙科学の伝統を取り戻し、前に進みたい。

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