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辺野古移設問題

2018年6月28日
◆激変する情勢に合う構想を◆

 太平洋戦争末期の沖縄戦の終結から73年がたった。沖縄県の翁長雄志知事は全戦没者追悼式の平和宣言で「恒久平和を希求する『沖縄のこころ』を世界に伝えていく」と述べた。平和の詩「生きる」を朗読した中学3年女子生徒の真摯(しんし)な言葉とまなざしに、改めて非戦への思いを強くした人も多いだろう。追悼式では、翁長知事と安倍晋三首相がそろって米軍基地問題に言及。宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を進める首相と、移設に反対を唱える知事の立場の違いが鮮明になった。

緊張緩和の可能性も

 在日米軍専用施設の約7割が沖縄に集中し、米軍基地に絡む事件・事故が相次ぐ。基地は北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備拡張など日本を取り巻く安全保障環境の悪化を理由に維持・強化されてきた。だが東アジアの情勢は大きく動きだしている。米朝首脳会談の実現で朝鮮半島は緊張緩和に向かう可能性が生まれた。

 東シナ海と太平洋の境界に位置する沖縄本島は、地政学上の戦略的重要性が指摘されてきた。その地理的な条件は今も変わらない。

 だが、はっきりしているのは沖縄を再び紛争の地とする選択肢はあり得ないということだ。地理的な条件は沖縄が東アジアの経済、人的交流の拠点となり得る可能性を示す。朝鮮半島の冷戦構造が大きく動く機会を捉え、平和と自由経済を発展させる新たな国際秩序の構築を目指すべきだ。非戦の構想は日本が主導したい。

 朝鮮戦争も沖縄に深い関わりがある。沖縄の米軍嘉手納基地や普天間飛行場は朝鮮戦争時に結成された国連軍が使用できる基地でもある。有事の際は北朝鮮の攻撃目標になるとされてきた。経済面でも、朝鮮戦争による特需が日本経済復興の足がかりとなった。

これ以上の負担無理

 米朝協議の行方と影響は楽観視できない。トランプ米大統領は在韓米軍の縮小検討を示唆する。朝鮮半島から米軍が退けば有事対応への懸念が強まり、在日米軍の強化や自衛隊の役割拡大の議論につながる可能性もある。中国も軍拡を続けている。しかし、沖縄にこれ以上の負担を押し付けるのは無理がある。今必要なのは本土を含めた総合的な安全保障戦略だ。

 日本政府は普天間飛行場を辺野古へ移設し、大規模な施設を造る工事を進める。これに対して翁長知事は平和宣言で、東アジアの動きに言及。「20年以上も前に合意した辺野古移設が唯一の解決策と言えるのか。緊張緩和の流れにも逆行しており容認できない」と計画の見直しを求めた。

 だが安倍首相は式典で「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くす」と述べただけで、東アジア情勢には触れなかった。政府は米朝首脳会談の日に辺野古沖を埋め立てる土砂投入を8月に行うと県に通知している。強引な手法だ。激変する安保環境を見据えた構想と、対話の姿勢を求めたい。

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