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民泊スタート

2018年6月21日
◆地方に客呼ぶ環境づくりを◆

 住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、マンションの空き部屋や一戸建て住宅に旅行者を有料で泊める民泊がスタートした。17年の民泊の市場規模は1251億円と推計される。ビジネスチャンスでもある。コンビニは民泊の鍵の受け渡しサービスを開始するなど、民泊の普及は他業種への波及効果もある。旅行者のニーズに敏感な民泊の仲介サービス会社も乗り出している。東京、大阪、京都など大都市に集中している旅行者を地方に誘導するため、環境整備が必要だ。

住民との共存が課題

 民泊物件の届け出は全国で2700件余りで、米仲介サイト大手のウェブサイトに掲載されている約6万2千件を大幅に下回っている。本県での届け出は6件(20日現在)で、全て一軒家に家主が住みながら空き部屋を貸す「家主居住型」。民泊は安価な宿泊先として格安航空会社(LCC)の利用者らに選ばれてきた。昨年2869万人に達した訪日外国人旅行者の急増に貢献したと分析できる。

 民泊新法は営業の上限日数を年間180日と定め、自治体はこの範囲内で条例に基づいて独自に規制している。本県は条例を制定していないが、多くの自治体は住居専用地域や学校周辺で平日の営業を制限している。海外からの宿泊客が、ごみ出しや騒音でトラブルを引き起こすなど閑静な住宅地で起きる「観光公害」への懸念が強まっているためだ。観光客と地域社会との共存が課題になる。

 大型連休や夏休みといった繁忙期には「生活環境の悪化」を理由に、営業を禁止する例もある。元々ある旅館との競合を心配する声を受けての厳しい措置とも言える。この結果、民泊を営業しようとする者には営業日数などが限られ、収入面での魅力が乏しい。これが届け出物件数が少なかった最大の理由に挙げられる。

物件増やす方策必要

 予約サイトを運営する仲介業者は未届け物件を掲載できない。このため規制の及ばないサイトを使って、違法物件で民泊営業が続けられる可能性が強い。「ヤミ民泊」を取り締まることができるように、国と自治体は協力して監視体制を整えなければならない。

 政府は東京五輪が開かれる2020年の訪日旅行者数を4千万人、30年には6千万人にするとの目標を掲げている。達成のためには、適正な価格で旅行者が宿泊できるようにすることが前提となる。

 民泊物件が伸びず、ホテルや旅館の宿泊料金が高騰して海外からの観光客数の伸びが鈍化したり、日本人のビジネス客が減少したりするような事態が起きるかもしれない。その場合は、国は自治体と協力し民泊物件を増やす方策を検討すべきだ。

 民泊への対応は、観光産業を主要産業に育てるとする国の本気度を問うている。自治体任せにせず、旅行しやすい環境づくりを進めてほしい。

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