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米朝首脳会談

2018年6月13日
◆共同声明の具体的な実践を◆

 初の米朝首脳会談がシンガポールで行われ、トランプ米大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が単独形式を含め約5時間、膝をつき合わせた。果たして、北朝鮮の非核化と朝鮮半島の平和体制構築を単なる構想で終わらせず、実践に移す推進力が生まれただろうか。北朝鮮との交渉で「過去の失敗は繰り返さない」と強調してきたトランプ大統領だが、共同声明に過大な意義を与える姿が目立った。共同声明には象徴的な文言が多く、後に大きな失望をもたらしかねない懸念を与える。

非核化の手順が不明

 米朝の指導者が署名した共同声明の内容は、トランプ大統領が説明するような「偉業」とするにはあまりにも距離がある。過去の米朝間や6カ国協議の合意、共同声明に比べ、非核化の具体的な手順や期間が抜け落ちた。

 さらに「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」というトランプ政権が最重視してきた原則さえない。トランプ大統領は「包括的な文書」と指摘したが、具体性に欠けることの裏返しと言わざるを得ない。トランプ大統領と金委員長には今後、共同声明の内容を具体的に実践する責任が問われる。

 昨年まで「小さなロケットマン」「老いぼれ」などと激しくののしり合ってきた米朝2人の指導者が首脳会談で向き合ったのは、朝鮮半島の緊張緩和と平和構築、何より首脳間の信頼構築に向けた第一歩としての意義はある。

 だが、政治家としての思惑も2人にはある。トランプ大統領は、くすぶるロシア疑惑捜査から目をそらし、11月の中間選挙を控え外交的成果を求める。金委員長には、米国との関係改善を進めることで先代指導者を超える業績を獲得するという野心があるだろう。

日本は独自の関与を

 それ以上に朝鮮半島に残された冷戦構造を平和体制に転換するという世紀をまたいだ課題への覚悟が2人の指導者には問われる。

 北朝鮮が実際に核兵器をどれだけ開発し、実戦配備しているのかさえ明らかになっていない。核活動の凍結から始まり、申告と査察、核関連施設と核兵器の解体に至るまで、完全な非核化は容易ではない。それだけに実現に向け、日本や韓国、中国など関係国が足並みをそろえ共同声明の履行を支えることが重要となる。

 北朝鮮が米国に求める体制存続のための安全保障のメカニズム構築についても、米朝だけでは実現できない。北朝鮮の非核化に相応し、北東アジア全体の安全保障と新秩序を考えることが求められる。中断してから今年で10年となる6カ国協議の枠組みの再生に向け、検討する価値もある。

 何より、これまで存在感が希薄だった日本の外交力が改めて試されるだろう。日本人拉致問題という懸案を抱え、日本独自の関与が求められる。拉致問題解決のためにも、朝鮮半島の平和維持に積極的に関わる姿勢が必要だ。

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