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データ流出問題

2018年6月12日
◆個人情報保護に目光らせよ◆

 スマートフォン(スマホ)などを通じたソーシャルメディアは、日常生活に欠かせない重要な社会インフラだ。だが利便性の一方で、個人データの流出や独占、事実に基づかないフェイクニュース、ヘイトスピーチの波及など負の側面も明らかになっている。これに対抗する目的で欧州連合(EU)は、個人データ保護を強化するため違反者に高額の罰金を科す「一般データ保護規則(GDPR)」を施行。世界で最も厳しい規則とされ、欧州市場で事業を展開している日本企業は対応に大わらわになっている。

企業には重要な武器

 日本には改正個人情報保護法があるが、日進月歩のテクノロジーに迅速に対応するためには、さらに実効性ある対策を検討する必要がある。

 ソーシャルメディアの巨大なネット市場に君臨するのは頭文字から「GAFA」と呼ばれる、グーグル、アップル、フェイスブック(FB)、アマゾン・コムの巨大IT企業4社だ。4社のビジネスモデルは、後続各社が事業基盤として活用するなど、GAFAのネット市場への影響力は甚大で、プラットフォーマーとも呼ばれる。

 FBなどは交流サイトサービスを無料にした上で、参加者から提供された個人データから趣味や嗜好(しこう)を分析、特定の個人向けに仕立てた効果的な広告などで成長を続けてきた。買い物情報などでネット検索をしたら、その後、それに類する広告がやたらと増えた経験を持つ人は多いだろう。氏名、住所、銀行口座、購買・検索履歴などの個人データは、ビッグビジネスを生み出す宝の山だ。「21世紀の石油」と言われるほど企業にとって重要な武器になっている。

独占は競争むしばむ

 データが管理不備でFBから流出し、トランプ氏当選という目的に向けて、恣意(しい)的に利用されたのが米大統領選でのデータ流出問題だ。選挙結果にどれほどの効果があったのか検証はできないが、データを利用した側の狙い通りの結果になったことは事実だ。

 歴史に「もしも」は禁物だが、データ流出なかりせば、トランプ氏の米大統領当選はなかったかもしれない。世界は私たちが今見ているものとは全く違う姿になっていた可能性もある。

 データの保護とともに独占にまつわる論点も今後、重要なテーマになりそうだ。購買履歴などを活用した広告は消費者の関心に直接訴える効果が絶大で、データを大量に持つ企業ほど有利に事業を拡大できる。巨大IT企業は資金的な余裕を背景に、革新的な技術を持つベンチャー企業を次々と買収、自陣に取り込んでいる。

 EUは2017年、EU競争法に違反したとしてグーグルに24億2千万ユーロ(約3千億円)の罰金を命じた。独占が進めば、健全な競争環境がむしばまれる恐れもある。公正取引委員会には最新の知見を動員し目を光らせたい。

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