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天安門事件29年

2018年6月9日
◆各国は連携し民主化を促せ◆

 1989年6月、中国の民主化運動が武力で弾圧された天安門事件から29年がたった。共産党独裁の堅持を最重要課題に掲げる習近平国家主席は5年前に就任以来、露骨な人権、言論弾圧を強めており、中国の民主状況は悪化する一方だ。新興大国として台頭する中国が世界で影響力を強める中、国際社会からの民主化要求の声は弱まってきたが決して諦めてはならない。欧米や日本は粘り強く民主化を促し続けるべきだ。

悲観的な見方強まる

 3月の憲法改正では、習氏の名前を冠した「新時代の中国の特色ある社会主義思想」が国の指導理念となり、国家主席の3選禁止規定を撤廃。習氏1強体制の長期化が予想され、民主化への悲観的な見方がさらに強まっている。

 昨年7月、国家政権転覆扇動罪で服役中だった民主活動家、劉暁波氏が肝臓がんで死去。9年近く劉氏を獄中に閉じ込め、自由な治療を認めなかった習政権に国際社会から非難の声が上がった。しかしその声は小さく、民主化を促す大きなうねりにはならなかった。

 特に民主化要求の最先鋒(せんぽう)だった米国の変化が目立つ。トランプ大統領は対中貿易赤字の解消へ強硬姿勢を強めるが、民主化はさほど重視していない。

 対照的なのがドイツのメルケル首相だ。李克強首相との会談や共同記者会見で、劉氏の妻で中国当局に軟禁されている劉霞さんの処遇など人権問題を取り上げた。メルケル氏は、中国当局が拘束している人権派弁護士の妻たちにも面会し、人権問題を重視する姿勢を示した。メルケル氏の積極的な対応を評価したい。日米や他の欧州諸国も足並みをそろえ、中国に民主化を働き掛けていくべきだ。

改善しない人権弾圧

 それには各国の連携が必要だ。中国指導部は「民主主義は普遍的な価値ではない」と結論付けて「西側民主」の受け入れを拒否、共産党指導下の「社会主義民主」を目指すと主張する。いずれにせよ、国民の多様な声が政治に反映される制度を整えるべきだろう。

 習氏は「共産党独裁の堅持」を最も重視して、国家安全委員会を新設し、国家安全法や反テロ法、インターネット安全法などを次々に施行し、警察国家づくりに努める。2015年には人権派弁護士や活動家ら約300人を一斉に連行。少数民族運動への取り締まりも強めた。しかし、国民の生活が豊かになり、世論が多様化する中、強権政治によって国内の長期的な安定を維持するのは難しい。

 習氏は現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」を提唱して国際社会に平和と共生を呼び掛ける。一方で、強軍・強国路線を打ち出し、南シナ海で軍事拠点化を進める。国内で人権弾圧を続ける独裁国家が国際社会では他国を尊重して民主的に振る舞うとは考えにくい。習氏は非民主的な状況が中国の国際的なイメージを大きく損なっていることを知るべきだ。

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