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米自動車輸入制限

2018年6月5日
◆危険な保護主義の転換促せ◆

 トランプ米政権が自動車の輸入制限策の検討を始めた。貿易赤字の削減が狙いとみられ、高率の輸入関税を課す可能性がある。3月には鉄鋼とアルミニウムに高関税を課す輸入制限を発動したばかりで、自由貿易のルールを踏みにじるような政策を自動車分野にも拡大しようとしている。危険な保護主義であり、貿易摩擦の激化を招き、世界経済に悪影響を与える恐れがある。到底容認できない。

秋の中間選挙狙いか

 米商務省は自動車と自動車部品を対象に、安全保障上の脅威があれば対抗措置が取れる通商拡大法232条に基づく調査をしている。驚異と認められた場合には輸入車に25%の関税を課す案が浮上しているという。現在、自動車の輸入関税は乗用車が2・5%、トラックが25%で、乗用車は大幅な引き上げとなる。

 自動車・自動車部品の貿易規模は大きく、日本の場合、2017年度の自動車の対米輸出台数は約177万台で、輸出全体の4割を占める。輸入制限が実施されれば、日本をはじめメキシコ、カナダなど米国への自動車輸出国にとって大きな打撃となる。米国以外の国にも連鎖すれば、貿易が縮小し世界経済への下押し圧力となる。

 世界貿易機関(WTO)のルールでは安全保障を理由とする輸入制限を例外として認めるが、トランプ政権の本当の狙いは、11月の中間選挙を前に貿易不均衡を是正するための保護貿易政策を打ち出し、支持を拡大することだろう。安全保障という大義名分を額面通りに受け取ることはできない。

 高率の関税は米国の消費者にも打撃を与える。輸入車の価格が上昇すれば、米国の消費者はこれまでより高い車を買わされることになるからだ。

2国間交渉が本道だ

 自由貿易のリーダーたるべき世界一の大国が国内事情を優先し、自由貿易を破壊しかねない保護主義に走っている。特定の国との貿易に問題があると考えるなら、WTOに提訴するか、まず2国間交渉で改善を図るのが本道だ。トランプ政権には大国の責務を自覚し、高関税による輸入制限の導入を思いとどまるよう求めたい。

 麻生太郎財務相は今月1日(日本時間)、米財務長官と会談。米鉄鋼輸入制限の対象から日本を恒久的に除外するよう要請し、自動車輸入制限についても自制を求めた。もし米国が強硬姿勢を崩さないなら、WTOへの提訴など対抗措置も辞さない意向を明確にするべきだ。欧州連合(EU)はすでに鉄鋼輸入制限に対抗するためWTO提訴の方針を固めている。

 トランプ政権は発足時から保護主義を貿易政策の柱としていたが、次々に具体的な強硬策として打ち出す段階に入ったように思われる。放置すれば、世界経済の深刻なリスク要因になる。日本はメキシコやカナダ、欧州、アジアの関係国と連携し、粘り強く米政権の転換を促す必要がある。

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