ホーム 社説

米朝首脳会談

2018年6月1日
◆不毛な応酬は時間の浪費だ◆

 トランプ大統領は、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長にいったん中止を通告した米朝首脳会談について、当初の予定通り12日にシンガポールでの開催を目指す考えを示した。中止通告の背景には、非核化の方法などを巡り事前交渉が難航している状況で、北朝鮮が強硬姿勢を示していることへのいらだちがあったとみられる。不毛な駆け引きの応酬は避けるべきだ。

非核化こそ最大課題

 中止通告を受けた北朝鮮は、金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官の談話を通じ、対話継続を希望するとの立場を表明した。再開された接触などでの北朝鮮の反応を見て、トランプ氏は会談の再検討に前向きになったとみられる。もともとは金第1外務次官ら対米交渉を担当する高官が、米国の出方を非難する談話を出していた。北朝鮮にとっては交渉の主導権を握るための揺さぶり戦術の一環にすぎなかったのかもしれない。ところが、トランプ氏は強硬なカードで対抗、北朝鮮を当惑させた。揺さぶり戦術は時間を浪費するだけで無益だ。駆け引きの応酬を自制し、非核化という最大の課題を実現するための交渉に重点を移していくべきだ。

 米朝首脳会談が決まる過程には、トップダウン型の政策運営が特徴的な米朝の最高指導者2人が主導するという規格外の流れがあった。実務協議から積み上げて首脳会談につなげる外交手法ではないだけに、総論では合意しても各論で難航する危険性を抱えている。

 外交交渉では「悪魔は細部に潜む」といわれる。「悪魔」という障害を少しでも除去するための駆け引きは必要だが、米朝間で現在展開されているのは議論以前の主導権争いだ。一刻も早く本来の交渉に戻るべきだ。

関係国の連携不可欠

 中止通告する直前、北朝鮮は北東部豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄するため、坑道などの爆破作業を米中韓など国外のメディアに立ち会わせて行った。2006年から6回の核実験が実施された実験場は、既にその役目をほぼ終えている。むしろ、過去の核実験の検証が難しくなり、実際の非核化プロセスで支障が生じる懸念がある。

 非核化の意思を示す措置として韓国や中国は肯定的に評価したが、トランプ氏は書簡で一言も触れなかった。「完全で検証可能かつ後戻りしない非核化」を要求する米国の立場からは当然だろう。北朝鮮は核実験場廃棄が「政治ショーにすぎない」との批判を真剣に受け止め、非核化で欠かせない検証や査察に誠実に応じる姿勢を示す必要がある。核実験場を爆破し封鎖することで、過去の核活動を隠蔽(いんぺい)することは許されない。

 米朝の相互不信は相当根深いことを今回のやりとりは示した。4半世紀にわたる北朝鮮の核を巡る危機の根源はここにある。日韓や中国など関係国は、相互不信の悪循環から米朝が脱却し、誤解が危機に転じないよう意思疎通のメカニズムづくりを図る必要がある。

このほかの記事

過去の記事(月別)