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改憲の手続き

2018年5月30日
◆運動の公平性確保見直しを◆

 今の通常国会で初めてとなる衆院憲法審査会が開かれ、自民、公明両党は憲法改正の手続きを定めた国民投票法の改正案を幹事会で提示した。自民党は3月にまとめた9条など4項目の改憲案の提示も目指すが、他党は了承せず、審査会では国民民主党の結成に伴う審査会幹事の選任にとどめ、質疑など実質審議は行わなかった。与党は月内の国会提出と審議入りを目指す。

資金力多い側が有利

 森友・加計学園問題などを巡って与野党の対立が続く中で改憲案の議論に入れないのは当然だろう。自民党はまず与野党が話し合える環境づくりに努めるべきだ。

 自公両党の国民投票法改正案は、先行して改正された公選法の規定に合わせ、投票する人の利便性を高める内容であり、基本的に合意できるものだろう。ただ国民投票法には、使える資金やテレビCMの規制など、運動の公平性を確保する観点からの問題点が残っている。

 提示された改正案は8項目。7項目は2014年の国民投票法の改正以降に改正された公選法に盛り込まれたものだ。投票日当日に駅や商業施設に設置できる「共通投票所」の導入、洋上投票の対象拡大などの内容で異論は無い。もう一つは、郵便投票ができる要介護認定者の対象を広げる案で、公選法と併せた改正を提案した。

 しかし重要なのは今回の提案に含まれていない点だ。一つは運動に使える資金の制限である。国民投票法は国民の活発な議論を促すため「運動は原則自由」という理念に基づいている。このため現行法では使える資金に規制はなく、どんな人や団体が巨額の資金を投入して投票での賛否を呼び掛けても許される。「原則自由」の理念は大切だが、資金の多い側が有利になることが想定される。その懸念を放置していいのか。

最低投票率も課題に

 欧州連合(EU)離脱の是非を問うた16年の英国の国民投票は賛成、反対の意見を代表する団体を認定し、使える資金に上限を設けた。日本の場合も運動団体を登録制にするなどした上で、資金の上限を設定し、収支報告を義務付け、事後にチェックできる仕組みにすべきではないか。

 二つ目はテレビCMの問題だ。現行法では投票日の14日前からCMは原則禁止となるが、それ以前は自由になっている。このためCMを多く出せる資金を持つ側が有利になると指摘される。

 投票率の問題もある。国民投票法には、成立に一定の投票率を条件とする「最低投票率制度」は盛り込まれなかった。しかし投票率がどんなに低くても「1票」でも多ければ改憲の可否が決まるという仕組みで国民の理解が得られるだろうか。当面は改憲案の国会発議の日程が想定される状況ではない。しかし重要な手続きの問題点だけに、見直しの議論は早期に始めておきたい。

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