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アメフット反則

2018年5月23日
◆なぜ悪質な行為続けたのか◆

 背筋が凍るような行為だった。学生アメリカンフットボールの東西の雄による定期戦で、関西学院大のクオーターバックがパスを投げ終え、その数秒後に無防備な状態で日本大の守備選手に背後から猛然とタックルされ、崩れ落ちた。被害を受けた関学大は、反則後もプレーを続けさせた日大の判断の背景に暴力的なプレーを容認する指示があったのではとの不満を強くにじませ、抗議文を提出。日大監督は辞任を表明したが、説明が尽くされていないとして被害選手の父親は被害届を提出した。関東学生連盟は調査のため第三者委員会を設置するとしており、一層の真相究明が求められる。

選手は「監督の指示」

 反則行為をした選手は22日、記者会見を開き、監督とコーチからの指示があったことを明らかにした。コーチを通じ監督から「相手のクオーターバックを1プレー目でつぶせば(試合に)出してやる」と指示を受けたと説明。その上で「指示があったとはいえ僕がやったことは変わらない。プレーに及ぶ前に正常な判断をするべきだった」と自責の念を吐露した。

 反則行為は、クオーターバックに背後からタックルした1回目を含め、日大の守備選手が資格没収(退場)になるまでの約4分間に悪質な反則を3回繰り返した。驚くのはすぐに交代を命じられることなく、さらに乱暴なプレーと反則を続けた後ようやく退場処分となったことだ。あれだけの重大な反則行為が起これば、監督は選手を即座に交代させ、強い調子で叱るのが一般的な対処だろう。

 鈴木大地スポーツ庁長官は「なぜあのようなプレーが起きたのか考える必要がある。大学スポーツ全体の課題として考えるべきだ」と語り、林芳正文部科学相は「看過できない非常に危険な行為」と指摘し、「事態の全容解明と再発防止に向け、必要な対応をしたい」との姿勢を示した。

背景に勝利至上主義

 関学大ばかりではない。日大との対戦の中止を求めた関東学生連盟の各校にとどまらず、国内のアメリカンフットボール関係者全てが日大自身による詳しい説明を待っている。関東学生連盟は日大の当該選手を試合出場停止に、監督を厳重注意処分にしているが、いずれも暫定的な措置だ。

 一部が勝利至上主義に陥り、相手に敬意を払いルールを尊重して正々堂々と試合する理想がおろそかにされているのではないかとの懸念が募る。日大の監督は、学生日本一のタイトル奪還を目標に掲げるあまり、フェアプレー精神が奥に引っ込んでしまった部分はなかったのか。

 相手を傷つけようとする反則はフェアプレーの対極に位置する最も醜い行為だ。スポーツに関わる選手と指導者は最大限の努力で、こうした考えを排除しなければならない。この基本原則を無視し、危険で悪質な反則を容認するなら、チームは厳罰を免れない。

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