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安保違憲の宮崎訴訟

2018年5月19日
◆問い直される不戦への誓い◆

 安全保障関連法を巡り、平和的生存権などを侵害され精神的被害を受けたとして、国に損害賠償を求め県民計259人が宮崎地裁に起こした集団訴訟が係争中だ。6月には1次、2次訴訟の併合審理が予定されている。歴代政権が禁じてきた集団的自衛権行使を解禁する安保関連法施行から2年余りが経過し、その違憲性を問う訴訟が全国で相次いでいる。今や21地裁24例に上り、本県の原告団人数は九州最多だ。

施行後に軍事緊張増

 安保法の国会審議では憲法学者らが「違憲」との見解を示し、市民団体などによる反対集会やデモが続いた。違憲論議の決着がつかないまま、2015年9月、国会で強行採決し法が成立。半年後の16年3月、施行された。

 以降、安保関連法に基づく新任務が次々と運用された。「駆け付け警護」と「宿営地の共同防衛」が可能になり、17年5月には平時から米艦艇などを自衛隊が守る「武器等防護」を実施した。日米の一体化が加速度的に進み、自衛隊の海外任務と活動範囲が大幅に拡大した。安倍晋三首相は「戦争に巻き込まれることは絶対にない」と説明していたが、後に南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊の日報隠蔽(いんぺい)問題が発覚。「戦闘」との記述が残っていることなどが判明し、自衛隊員を危険にさらしかねない現実があらためて周知の事実となった。

 日本の防衛予算は6年連続で膨張し、18年度は過去最大の5兆1911億円。原告側は、施行後、日本を戦争当事国化させる危険性が高まり、軍事的緊張が高まったとして、平和的生存権と人格権が脅かされていると主張。さらに実質的に憲法規定を改変した手続きの違法性も問う。

弁論で危機感鮮明に

 本県には自衛隊基地や防衛関連施設、隣県には川内原発があり、攻撃対象となる危険が高い上、県民が戦争にいや応なく協力させられる事態を原告側は想定。宮崎地裁での口頭弁論で、戦争経験者や育児中の母親らが「私たちがいつ戦争の被害者、加害者になるかもしれない」と不安感を述べ、安保関連法が県民の暮らしにどんな影響を与えているか具体例を示した。

 それら平和を希求する人々の声の連なりには、世界で進む軍備増強への危機感が鮮明だ。弁護団事務局長の松田幸子弁護士は「古今東西、誰一人として戦争をしたいという人はいない。人々の幸福と平和を守ることが世界共通の課題であり、人類の進むべき道。平和憲法を掲げ戦後を歩んできた日本の役割は大きい。平和を望む全人類の連帯の訴訟だ」と話す。

 過去の大戦での加害と被害の歴史から、日本は不戦の誓いを立て平和憲法を掲げた。改憲への動きが加速する中で、誓いのたがが緩んではいないだろうか。二度と戦禍を繰り返さないための司法への訴えは、私たち一人一人に投げ掛けられた問いでもある。

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