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セクハラ問題

2018年5月18日
◆徹底的に再発防止策講じよ◆

 セクシュアルハラスメントという言葉が「日本新語・流行語大賞」の新語部門で金賞に輝いたのは1989年、平成が始まった年だ。セクハラを問題視することに、当時は「職場で冗談も言えないのか」と反発もあった。約30年を経て平成も終わろうとしている。状況は改善しただろうか。福田淳一前財務事務次官によるセクハラ問題は、性差別の根深さを改めて浮き彫りにした。

法改正後も改善せず

 音声データに「胸、触っていい?」「抱き締めていい?」という発言が残っていても、福田氏は「全体を見ればセクハラに該当しない」と否定したまま財務省を去った。財務省はその後にセクハラを認定、謝罪した。

 ところが麻生太郎財務相は「役所に迷惑を掛けたとか品位を傷つけたとか…(そういう理由で)処分した」と省の発表とは異なる見解を示し、「『セクハラ罪』という罪はない」と開き直った。11日の衆院財務金融委員会で追及され、個人の見解として「本人がないと言っている以上、私どもとしてあるとは言えない」とする一方、財務相の立場では「(セクハラを)認めている」と苦しい答弁に追われた。財務省は再発防止に努める姿勢を示しているが、麻生氏は依然としてセクハラに甘い態度を取り続けている。

 男女雇用機会均等法は2度の改正を経て対策を強化、組織の長はセクハラに毅然(きぜん)とした姿勢を示さなければならなくなった。麻生氏の態度は、法の精神にももとる。

 性被害を告発する米国発の「#MeToo」運動は世界に波及したが、日本の動きは鈍い。理由は明らかだ。麻生氏の責任を問わないばかりか、被害女性を責める動きさえある。世界経済フォーラムが昨年発表した「ジェンダーギャップ指数」で日本は144カ国中114位。“遅れた国”なのだ。

事業主は実態把握を

 法は事業主に相談窓口設置を義務付けたが、被害を申告した女性が配置換えになったり、「女性に責任がある」といったうわさを流されたりするケースが後を絶たない。これでは被害を訴えられない。事業主は「相談がないからセクハラはない」と判断せず、実態をつかむ努力をするべきだ。

 セクハラは人権侵害であり、根底に差別意識がある。言葉による被害だけでなく、キスされたり、抱きつかれたりといった直接的な性暴力もある。被害者の心の傷は深い。自分を責める人も多い。そんな女性たちに言いたい。あなたは悪くない、と。

 ここにきて、反セクハラのうねりが生まれつつある。今月上旬には財務省前など各地で女性たちが抗議の声を上げた。野田聖子女性活躍担当相は記者会見で、再発防止策を講じると明言した。「セクハラはNO」という立場を貫く勇気が必要だ。男女を問わず、誰もが働きやすく、生きやすい社会を目指さなければならない。

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