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中国の武力威嚇

2018年5月16日
◆台湾への圧力やめ対話せよ◆

 中国軍が台湾海峡で実弾射撃演習を行うなど台湾周辺や南シナ海で軍事力を見せつけ、対中独立志向の台湾の蔡英文政権や、台湾と関係強化を進める米トランプ政権をけん制している。中台統一を悲願とする中国は蔡総統への圧力を強めているが、台湾住民のほとんどは統一を望んでいない。露骨な武力威嚇は、かえって台湾住民の反中感情をかきたて、周辺各国も中国の覇権主義への疑念を強める結果になるだろう。

 中国は圧力を停止し、凍結してきた蔡政権との対話を始め、海峡の平和と安定を長期的に維持し中台の共生を図るためにどうすればよいか。真剣に話し合うべきだ。

米との関係をけん制

 4月、中国の陸軍航空兵部隊は台湾対岸の福建省で海上実弾射撃演習を実施。さらに中国海軍の空母「遼寧」の艦隊は同海峡東方の西太平洋で総合的な攻撃・防御訓練を実施した。中国の当局者は実弾演習に関し「台湾独立派が勝手気ままに振る舞うのなら一層の行動を取るだろう」と述べ、台湾側を強くけん制した。

 中国側は「一つの中国」の原則で一致したとされる1992年合意を認めるよう台湾側に求めているが、約2年前に就任した蔡総統は応じていない。ナンバー2の頼清徳行政院長(首相)は「台湾は既に主権独立国家だ」などと再三発言してきた。

 一方、トランプ大統領は3月、米国と台湾の閣僚や高官の相互訪問を促進して関係強化を図る超党派の法案に署名し、同法が成立。米国務省高官が台湾を訪問した。また米政権は昨年、台湾への武器売却方針を決め、米台の軍艦船の相互訪問の検討を始めた。中国は米台の動きを連携した対中けん制とみて、軍事演習に踏み切ったとみられる。

国際イメージ損なう

 中国の習近平国家主席は全国人民代表大会(全人代)閉幕式の演説で、「一切の祖国分裂行為は失敗に終わり、人民の批判と歴史の懲罰を受ける」と台湾の独立勢力を厳しく批判した。5月初め、中国は台湾と外交関係を持っていたドミニカ共和国と国交を樹立し、台湾と断交させた。蔡総統就任以来、中国が外交合戦で台湾から奪った国は3カ国となった。中国は国際社会で「台湾孤立化」を進める。

 一方で中国の李克強首相は「台湾同胞の大陸での修学、起業、就職、生活のために大陸同胞と同じ待遇を提供する」として台湾の若者の取り込みに力を注ぐ。まさにアメとムチの策だが、そうした強引なやり方で台湾住民の心を掌握することはできないだろう。

 中国は武力をかさにきた覇権的な手法が自らの国際イメージを損なっていることを知るべきだ。米国は貿易摩擦などで中国と対立している。しかし、台湾を中国との交渉カードにすれば、中国を刺激して台湾住民に累が及ぶ恐れもあり、慎重な対応が必要だ。

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