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地銀経営統合

2018年5月15日
◆寡占の是非は個別に点検を◆

 企業は適正な競争環境下で事業を営むことが原則だ。ライバルが存在せず市場を寡占すれば、提示価格が高くても、消費者はその商品を買うしか選択肢がなくなり、企業は圧倒的に優位になる。こうした事態を防ぐために独占禁止法が定められ、公正取引委員会が目を光らせている。

 人口減少などによる地域経済の停滞が、金融サービス需要の減退につながり経営が揺らいでいる地域金融機関に、この原則を厳格に適用することは是か非か。ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と長崎県が地盤の十八銀行の経営統合計画を巡り、公取委と金融庁が激しい論争を繰り広げている。

地域経済への影響は

 統合が実現すれば長崎県内の貸出金占有率(シェア)は7割に達する。公取委はこうした寡占状態になれば、貸出金利を高めにしても、借り手にとってはそれ以外に選択肢がなくなり、顧客に不利になるとしている。シェアを下げなければ統合を認めない方針だ。

 これに対し金融庁は、シェアの上昇に伴って貸出金利が自動的に向上することはなく、県内シェアのみに基づく判断は妥当ではないと反論している。日銀も同様の調査結果を発表、全国地方銀行協会も公取委の統合審査の柔軟化を求める要望書をまとめ、政府の規制改革推進会議に提出した。

 FFGと十八銀行も、シェア引き下げを目指し融資先への債権を他の金融機関に譲渡することを検討している。地域金融機関の経営統合が承認された事例はこれまでもいくつかあるが、今回のFFGと十八銀行の統合は、地域経済への影響をどう評価するかといった観点から注目されている。

再考したい競争政策

 地域金融機関は、営業圏内の経済規模の縮小や、日銀の大規模金融緩和による低金利によって経営が圧迫されている。資金を国債などで運用していれば利益が出ていた時代は終わり、数少ない優良な取引先を巡りライバルとの間で低金利を提示し合う争奪戦を続け、経営体力を摩耗している。

 統合が認められず経営基盤が弱まれば、サービス提供機能が低下するのは避けられない。認められれば、それで良いかといえば、そうでもない。市場寡占が進めば、その分、顧客の負担が増える恐れは否定できないからだ。

 顧客や地域経済にとってどういう姿が望ましいか。現在の競争政策が求める基準を金科玉条のごとく守るのではなく、その目的や考え方の基本は維持しつつ、個別事案ごとに勘案する作業を尽くしたい。仮に統合を認めるなら、統合後の経営を顧客目線でチェックする仕組みも検討すべきだ。

 これを機に、経済活動が縮小する中での競争政策の在り方を再考してもいい。少ないパイを多くのプレーヤーが争えば、共倒れするのは道理だ。高度成長期から使ってきた物差しは「右肩下がり」の時代でも有効なのか点検したい。

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