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貿易戦争回避へ

2018年4月13日
◆報復措置の連鎖食い止めよ◆

 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、保護主義に対抗するために関係国に対話と行動を促す共同声明を採択して閉幕した。念頭にあるのは「米国第一主義」を掲げ、自国産業と雇用を守るために、保護主義的な貿易政策を強めるトランプ米政権だ。G20としての意思を示したこと自体に意味なしとはしないが、国際社会の要請に背を向け続ける米国の政策運営に、直接的な効果をもたらすとは考えにくい。

米国に翻意促したい

 今回の声明は不公正な貿易相手国に対する「正当な対抗措置」を容認した。声明をまとめるために米国が受け入れやすい表現を採用したためだが、「対抗措置」を認める内容になったことは、保護主義を排除しようというG20の決意を弱める結果になったと言える。

 回避しなければならない事態は関係国の間で報復措置が連鎖する「貿易戦争」だ。対米鉄鋼輸出国は適用除外を目指した交渉を続けているが、欧州連合(EU)はそれと並行して報復の対象となる米国からの輸入品リストを公表、中国も対抗の構えを見せている。

 世界貿易機関(WTO)提訴なども一考に値するが、決着までには相当な時間がかかる。米国と貿易相手国の間での2国間交渉、あるいは関係国が集まる多国間の協議などを通じて、粘り強く翻意を促し続けるしかない。

 トランプ大統領が実現を目指す政策目標は、米国の「国益」と言えるのか。鉄鋼・アルミニウムへの高関税は米国の鉄鋼業界には朗報かもしれないが自動車など鉄鋼を材料として使う産業にとっては打撃となる。

G20で仮想通貨議題

 中国も「問題なし」とはいかないだろう。補助金を活用した鉄鋼の過剰生産と輸出はかねて問題視され、国際社会は是正を求めてきた。米国市場から中国の鉄鋼が締め出されれば、米国の鉄鋼業は潤うが、その分がアジア市場などで出回り、鉄鋼相場は値崩れを起こしかねない。米国への働き掛けと同時に、中国にも強く対応を求めていきたい。

 今回のG20では、仮想通貨を初めて議題とし、交換業者への登録制導入など規制強化を打ち出した。日本は世界に先駆けて法律で仮想通貨を決済手段として認め、発展を後押しする政策を進めてきた。しかし580億円分の流出問題が発生し、顧客保護のための仕組みや業者の管理能力などに大きな問題があることが分かった。このため、金融庁は方針を転換し規制強化に乗り出している。

 確かに現状は、決済よりも投機を目的とする活用が目立つ。投資家保護を急ぐ必要があるが、同時に仮想通貨の中核である先端技術「ブロックチェーン」は大切にしたい。金融だけではなく、医療などでも活用が期待されている。今のところ規制が先行するのは仕方ないが、中長期的には技術革新とのバランスにも配慮したい。

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