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陸自の日報隠蔽

2018年4月12日
◆政治家も責任を取るべきだ◆

 防衛相が国会で「存在しない」と答弁していた陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報が見つかった問題で、日報の存在が1年以上前に確認されながら、防衛相ら幹部に報告されていなかったことが明らかになった。小野寺五典防衛相は参院外交防衛委員会で陳謝したが、自衛隊の根深い隠蔽(いんぺい)体質があらためて浮き彫りになったと言うしかない。日本の安全保障を担い、5兆円を超える防衛費を誇る自衛隊は、政治による厳格な統制の下に置かれなければならない。その信頼が根底から揺らぐ事態だ。

政権の統治能力疑問

 安倍政権では情報を巡る問題が相次いでいる。財務省では森友学園関係の決裁文書の改ざんが行われ、政権中枢の関与の有無が問われている。厚生労働省では働き方改革を巡り「なくなった」としていた調査データ原票がその後、見つかった。文部科学省でも昨年、加計学園の獣医学部新設を巡り「存在を確認できない」とした文書が、再調査で確認された。

 「国民全体の奉仕者」であるべき公務員が情報を隠し、閣僚ら政治家の指導力に疑問符が付けられている。「政と官」の信頼と緊張関係が政権運営の基礎だ。政権の統治能力が問われている。

 小野寺防衛相は今月、日報が存在していたことを公表。さらに、南スーダン国連平和維持活動(PKO)部隊の日報隠蔽に関する特別防衛監察の過程で昨年3月、陸自の研究本部が日報を保存していることを見つけながら、防衛相や統合幕僚監部への報告を怠っていた、と明らかにした。統幕への報告は今年2月、小野寺氏に伝えられたのは3月末で、公表まで1年以上も隠されていたことになる。

第三者による調査を

 なぜ報告しなかったのか。研究本部も防衛相の国会答弁を知っていたはずだ。答弁が虚偽になる事態を意識的に放置していたとすれば責任感の欠如は極めて深刻だ。一方、当時の稲田朋美防衛相側の問題もある。稲田氏は昨年7月に南スーダン日報隠蔽問題の責任を取って辞任したが、それ以前から省内を統率する能力を失っていたと言えよう。

 今回の事態に関して小野寺防衛相は「私の指示で事案が表に出てきた」と述べ、文民統制が機能していないとの野党の指摘に反論した。だが、納得はできない。なぜ、公表時点で長期間の隠蔽が分からなかったのか。公表直後にさらに新しい事実が明らかになる悪循環は、小野寺氏も省内を統率できていない証左ではないか。

 隠蔽の経緯については防衛省内のチームで調査するとしているが、内部調査には限界があろう。第三者に委ねるべきだ。政と官の信頼関係には、官僚だけに責任を押し付けるのではなく、政治家がけじめをつけることも必要だろう。財務省の改ざん問題でも、まだ誰も責任を取っていない。政権として責任の在り方を真剣に考えるべきだ。

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