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TPP復帰発言

2018年2月9日
◆米大統領の真意見極めたい◆

 トランプ米大統領が環太平洋連携協定(TPP)への復帰を検討すると表明した。世界最大の経済大国が戻りたいというのなら歓迎したい。米国抜きの11カ国によるTPP合意を主導した日本の最終的な狙いも米国の復帰だ。米国が加われば、世界の国内総生産(GDP)の約4割をカバーする巨大な経済圏が太平洋をまたいで、中国を取り囲むようにアジア、オセアニアに展開されることになる。

11月中間選挙対策か

 TPPの効果が本格化し、県内の経済成長が促されれば、世界第2の経済大国である中国に一層の貿易・投資拡大を促す作用も期待できる。台頭が続く保護主義に対抗する大きな連合としても力を発揮するのではないか。

 しかしTPP離脱はトランプ氏の大統領選の公約だった。さらにこれまでの同氏の言動からすれば復帰はあまりにも唐突だ。TPPや、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)によって日本市場での競争が不利になるとして、農業団体から突き上げを受けていた事情も伝えられてはいる。11月の中間選挙に向け、国民の不満を少しでも解消したいとの思惑があるのかもしれない。

 そもそもは自由貿易の推進によって製造業などが海外に出て行き、自国の雇用が失われることへの対抗措置としての離脱だった。復帰は、トランプ支持層の中核をなす白人労働者に衝撃となる恐れもある。それでも、復帰を口にした背景に何があるのか。真意を慎重に見極めたい。

 トランプ氏が復帰検討を表明したのは、世界中から政財界の大物が集まるスイスで開かれたダボス会議だった。この会議では、多様性や開放性をテーマに各国の指導者や著名な研究者、投資家らが、世界が直面する地球規模の諸課題を議論。今回は「米国第一主義」への風当たりが強まることが予想された。

通用しない自国主義

 案の定、参加者からは保護主義やナショナリズムを非難する意見が相次いだ。これに対し、米国は、ロス商務長官が「貿易戦争は毎日起きている」と指摘し、報復関税措置などを正当化した。ムニューシン財務長官も「米国にとって良いことは、世界にとっても良いこと」と強調した。その後、トランプ氏は「米国第一主義」は単独主義でないと強調したが、理解が得られたとは到底思われない。

 この文脈からみると、復帰検討の発言には、TPPを米国の経済戦略に有利になるように組み直したいとの思惑が秘められていると、勘ぐりたくなるのが自然ではないか。

 しかし、TPPを頑強に拒否、てこでも動かなかったトランプ氏がTPPに視線を向けたことは事実だ。多国間交渉の中で自国第一主義を貫くことができないのは自明の理だ。米国がそれを受け入れ、復帰を望むということなら交渉の余地が出てこよう。

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