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ロヒンギャ難民帰還

2018年2月3日
◆解決へ国際機関支援受容を◆

 ミャンマーから隣国バングラデシュに逃れたイスラム教徒少数民族ロヒンギャ難民の帰還は準備が整わず大幅に遅れる見通しとなった。ミャンマー政府が国際批判をかわすため進めている急ごしらえの帰還計画ではロヒンギャの苦境がかえって深まる恐れがある。ミャンマー政府はまず、外国人の立ち入りや報道の制約を解き、国際機関の支援を受け入れるべきだ。

深刻な報道への弾圧

 昨年8月、ロヒンギャの多くが暮らすミャンマー西部ラカイン州で、国軍とロヒンギャ武装勢力の衝突が起きた。それ以降、65万人以上が国境を越えてバングラデシュに逃れ、アジア最大の人道危機になっている。ミャンマー政府は否定しているが、ラカイン州では当局による組織的殺人やレイプが横行し、「民族浄化」が行われているとの国際的批判が強い。

 ミャンマー、バングラデシュ両政府は昨年11月、2カ月以内の難民帰還開始で合意。1月半ばには帰還を開始し、2年で完了すると発表した。だが、帰還者リスト作成など準備は進んでいない。帰還して安全に生活できるか、という難民の根強い不安が障害になっている。一方、ミャンマー政府は2カ所の難民センターを設置して受け入れ準備は万全と強調する。

 最大の問題はラカイン州で外国人の立ち入りが制限され、国連機関や国際人権団体の支援・監視活動が妨げられていることだ。治安対策を一手に握る国軍のかたくなな態度が理由とみられる。報道への弾圧はやめるべきだ。昨年12月、治安関係資料を不法に入手したとしてロイター通信のミャンマー人男性記者2人が拘束、逮捕された。ほかにも記者の拘束、逮捕は続いている。民主化の旗手として国際社会の支持を受け、一昨年に政府のトップとなったアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が指導力を発揮し、報道の自由を尊重するよう強く求めたい。

国籍を与える必要も

 帰還は、強制でなく自発的に行われなくてはならない。時間がかかっても条件を整えるべきだ。さらに本質的な解決のためにはロヒンギャを不法移民と位置づけてきた長年の政策を転換し、国籍を与える必要がある。国際社会が粘り強く働き掛けたい。ミャンマー政府への圧力を強める欧米やイスラム諸国に対し、近隣の大国で経済関係が密接な中国やインドはミャンマーに同情的だ。日本も欧米とは一線を画し、圧力よりも説得と支援を重視する立場をとる。

 河野太郎外相は1月、ミャンマーを訪問し、スー・チー氏、ミン・アウン・フライン国軍総司令官とそれぞれ会談、支援アクセスの拡大を求めた後、外国閣僚として異例のラカイン州を視察した。訪問の直前、国軍は治安要員らがロヒンギャ10人を不当に殺害したと初めて認め、処罰する方針を表明した。真の民主化と人道危機の解決につながる変化を促せるか、日本外交の真価と努力が問われる。

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