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仮想通貨規制

2018年2月2日
◆投資家保護へ法適用検討を◆

 不正アクセスにより約580億円分の仮想通貨が外部に流出した仮想通貨取引所大手コインチェックに対し、金融庁は業務改善命令を出した。不正による仮想通貨の損失額としては過去最大の規模だ。仮想通貨を巡っては、代表格であるビットコインを投機対象とした個人投資家による取引が急増。値動きが荒く、短期間で価格が激しく上下する状況に対する懸念が高まり、金融システムの安定確保の観点から規制強化の必要性が指摘され始めていた。

市場の過熱に警戒感

 今回の流出騒ぎは、取引所の管理能力に問題がある可能性を示した。仮想通貨市場がこれだけ広がっている現状に照らせば、投資家保護を目的に取引業者の透明性向上などを規定している金融商品取引法の適用を検討することが急務になったと言えるだろう。

 日本は昨年、改正資金決済法を施行、先進国でいち早く、仮想通貨を決済手段として法律で定義し、交換業者に登録制を導入した。今回、仮想通貨が流出したコインチェックは登録を申請、関東財務局による審査が続いていた。

 世界的にも投機マネーによる市場の過熱に対する警戒感が増し、既に中国や韓国は規制を強化。3月の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、ドイツ、フランスが国際的な規制を提案し、議論する運びになっている。

 元々はデジタル空間で簡単・迅速に決済、送金する仕組みを目指すとして始まったが、超低金利が続く中で、運用益を狙える数少ない投資先として注目を集め、価格が急騰。今では支払い手段としてはほとんど使われず、専ら投機の対象として巨額資金が投じられるようになった。

資金洗浄など課題も

 企業業績見通しなどが売買の判断材料になる株式などと違い、仮想通貨には特定の資産の裏付けがないため、将来の価値を予想する確たる根拠はなく、投資家の心理的要因に取引が主導される余地が大きい。このため、当局による規制強化の動きなどに極端に反応し、値が跳ね上がったり、急落したりしている。

 市場の不安定性に加え、欧州などで懸念が深まっているのは、仮想通貨が、犯罪に絡むマネーロンダリング(資金洗浄)に使われる事態やテロ資金への流用だ。問題は山積しているが、仮想通貨は、革新的な技術と評価される「ブロックチェーン」を活用し、金融サービスの利便性を飛躍的に高める可能性を秘めている。投資家保護は重要だが、過度の規制でその芽を摘み取らないようにしたい。

 法定通貨の価値がデータで代用できるようになれば、理論的には紙幣や硬貨の発行、運送、保管が必要なくなる。社会が一変する可能性がある。現金志向が強い日本では実感できないが、研究は確実に進んでいる。時代は大きく変わろうとしている。その過渡期の今、足元をしっかり固めたい。

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