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南北合同チーム

2018年1月25日
◆政治の五輪利用許されない◆

 韓国と北朝鮮が平昌冬季五輪の開会式で合同入場行進するだけでなく、アイスホッケー女子の合同チームを結成することで合意した。合意内容については、国際オリンピック委員会(IOC)と協議し承認を得た。開会式での合同入場行進は2000年シドニー夏季五輪でも、06年トリノ冬季五輪でも実現しているし問題ないだろう。一方、アイスホッケーの合同チーム結成は大いに問題がある。

選手の出場権を侵害

 アイスホッケー女子では韓国の23選手に北朝鮮の12選手を加えることを承認。試合ごとに出場する22選手のうち最低3人は北朝鮮から選ぶ方式で合意した。出場機会が減る韓国選手は複雑な心境を口にしている。また、他国より合同チームの登録人数が増えることに、競技の公正性を置き去りにした特例措置に不満も渦巻く。

 選手の五輪に出場する権利は極めて重い。だからこそ、IOCは組織的ドーピングを進めたロシアの国内オリンピック委員会を資格停止にしても、ドーピング違反を犯したことのない選手の平昌五輪出場を容認したのだ。政治に翻弄(ほんろう)され、選手の五輪出場権に影響を与える変則的な合同チーム容認は、IOCの掲げる「アスリート第一主義」はどこへ行ったのかと、全世界から批判されるだろう。

 いずれにしても、選手の戸惑いは大きいに違いない。これまで会ったこともない選手と、どのように連係プレーを組み立てるのか、想像できないだろう。ともに努力する喜び、チームメートとの友情といったスポーツの価値は完全に忘れ去られている。

 そもそも、この構想は韓国と北朝鮮の五輪関係者らが時間をかけて検討したものではなく、スポーツの枠組みの外から急に出てきたものだ。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は、合同チーム結成は「平和五輪」の象徴となると強調する。

中立性揺らぐIOC

 政治的中立を理念とする五輪に、開催国の政権が手を突っ込んでいいのか。このような性急で人工的なチーム結成は政治的パフォーマンスではあっても、五輪精神と相いれない。

 五輪憲章は「五輪の競技会場では(中略)いかなる種類の政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない」と明記している。構想は両国の政権が仕掛けたプロパガンダとみられても仕方がない。これは明らかに政治による五輪の利用だ。

 IOCは冷戦下の1980年代、東西両陣営のボイコット合戦により、イメージの上でも財政的にも大きなダメージを受けた。国際政治の動向と一線を画し、伝統的な五輪の理念と価値を守るのがIOCの揺るぎない姿勢のはずだ。これと異なる今回の姿勢は、五輪運動は政治にもてあそばれるきっかけを与えることになる。IOCは五輪の政治的中立性とはどのようなものか、あらためて考えることが求められる。

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