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全世代型社会保障

2018年1月23日
◆横断的な制度考える好機だ◆

 少子高齢社会や格差社会のただ中で、社会保障制度はさらに重要性を増す。政治環境、経済情勢をにらめば、今年は今後の社会保障の在り方を探る好機だと言える。いやむしろ、今を逃せば社会保障の持続性に赤信号がともる恐れが大きい。だが、年頭の記者会見を見る限り、安倍晋三首相の関心は憲法改正に向かっている。国論を二分しかねない改憲論議の傍ら、社会保障の見直しが放置されたままではいけない。野党が率先して骨太の議論を仕掛けてもいい。

痛み伴う改革不可欠

 安倍氏率いる自民党はこれまで5回におよぶ衆院選、参院選に全勝した。来春の統一地方選、来夏の参院選まで大型選挙もなく、政権は安定期にある。安倍首相はこの5年で雇用が185万人増え、名目国内総生産(GDP)が過去最高になったと胸を張る。であれば、社会保障や財政再建に向けた真剣な議論を始める時ではないか。国民の「痛み」を伴う改革の議論は、政治的・経済的に不安定な情勢の下では困難だからだ。

 安倍首相が打ち出した「全世代型社会保障」は、野田佳彦首相時代の旧民主党が示した「税と社会保障の一体改革」に盛り込まれていた。与野党間には議論のベースとなる共通の問題意識があると言っていい。一体改革に基づいて消費税率が引き上げられるのは来年10月。景況感が悪化した場合、与党内から景気対策のための財政出動を求める声が上がる可能性がある。財政規律を意識し、弱者にも目配りした社会保障の見取り図を描くには今がラストチャンスだ。

 「30年に1度の大改革が、われわれにとって頭が痛かった」。昨年12月、麻生太郎財務相は2018年度予算案をこう総括した。30年に1度とは、2年に1度の診療報酬改定、3年に1度の介護報酬改定、5年に1度の生活保護費の見直しが重なったことを意味する。

給付抑制は逆効果に

 現状は改革とは程遠い。診療報酬本体の引き上げで医師の収入は増えるが、個人や企業の負担も増える。一方、医療の効率化や医師の偏在解消などは決め手を欠いたままだ。25年には団塊世代が全て75歳以上になり、医療と介護の費用が一段と増える。医療と介護の協働による無駄の解消、家族と地域の連携も視野に入れた効率的で優しい制度の青写真が必要だ。

 生活保護では、今年10月から生活扶助費が引き下げられるが、財界に賃上げを迫る首相の姿勢とちぐはぐではないか。公的年金にも課題は多い。就職氷河期以降に激増した非正規雇用の労働者には年金保険料の未納から、将来、無年金・低年金に陥る恐れのある人が少なくないとみられる。生活保護受給者の増加につながる。

 給付の抑制で財政を安定させようとすれば、生活の下支えをする年金や生活保護の機能そのものが失われ逆効果になってしまう。制度を横断的に貫く最低保障の仕組みを検討する時期を迎えている。

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