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自民の改憲論点

2018年1月9日
◆項目制限は幅広い議論阻む◆

 自民党の憲法改正推進本部が、改憲を目指す4項目の論点をまとめた。焦点の9条については、戦争放棄の1項、戦力不保持などを定めた2項を維持したまま自衛隊を憲法に明記する「加憲案」と、2項を削除する案の両論を併記した。自民党としての9条改正案を絞り込まなかったのは、各党との議論の余地を残す狙いとの見方もある。だが、安倍晋三首相が昨年5月に突然提起した「加憲案」に対する反対論が根強く、案を絞りきれなかったのが現実だろう。

整合性乏しい9条案

 自民党は当初、2017年内に党の改憲案をまとめる方針だった。安倍首相(自民党総裁)は「与野党を問わず具体的な案を持ち寄って、衆参両院の憲法審査会で議論を深めていただきたい」と述べ、各党に改憲案の提示を促す考えを示す。自民党は2018年の通常国会で改憲項目を絞り込み、早ければ18年中の国会発議を目指すが、まずは党内で意見集約を図る丁寧な議論を尽くすべきだ。

 「論点まとめ」は9条について加憲案とともに、2項を削除して「自衛隊の目的・性格をより明確化する」との案を併記した。9条論議の根幹に関わる論点だ。首相は加憲案によって「自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」と強調。しかし野党は自衛隊という文言を明記すれば、戦力不保持の2項は「死文化」し、集団的自衛権行使の全面的な容認につながる可能性もあると指摘する。憲法に新たな解釈論争を持ち込むことになろう。2項削除案の方が整合性は取れている。

 大規模災害時などでの緊急事態対応では、憲法に明記されている国会議員の任期延長を認める案と、政府への権限集中や私権制限を含めた本格的な緊急事態条項を新設する案を併記した。ここでも自民党の議論は集約されていない。

配慮欠く参院選改正

 参院選の「合区」解消に関する議論の整理は、幅広い論点への配慮を欠いている。衆参両院議員の選挙に関しては「法律で定める」とする47条を改正し、参院選で改選ごとに各都道府県から1人以上選出できると規定する方向でおおむね一致したとする。だが国会議員は「全国民を代表する」と定めた43条との整合性はどうなるのか。参院に都道府県代表の性格を持たせるならば、衆参両院の関係も見直すべきではないか。重要な論点を避けた整理は説得力を欠く。

 自民党の論点整理は、立憲民主党などが主張する「首相の解散権の制約」などには言及せず、一方的な項目設定になっている。首相は「スケジュールありきではない」としながらも「20年を日本が生まれ変わる年にしたい。新時代の幕開けに向け憲法の議論を深めたい」と述べた。自民党が項目を絞り、期限を区切って呼び掛ける議論では、各党の幅広く深い議論を喚起するのは難しいだろう。1月召集の通常国会で腰を落ち着けた議論を求めたい。

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