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18年度税制改正

2017年12月6日
◆労働形態に合う制度設計を◆

 税制は個人の暮らし方や働き方を左右し、企業の経営戦略にも大きく影響する。国家や自治体が運営に必要な資金を徴収する中で、格差是正へ所得を再配分したり、目指すべき社会に向け人々の経済行動などを誘導したりする。こうした作用を通じて国民生活や国家運営を方向付ける機能などから、税は民主主義の基本といわれ、論点は単に歳入・歳出のバランス上の問題にとどまらない。時代の変化に適応する税制が必要だ。

終身雇用の前提崩壊

 政府と与党の税制調査会は2018年度税制改正で、働き方改革をテーマに掲げ論議を進めている。さらに喫緊の課題であるデフレ脱却に向けて、法人税の優遇措置を活用して賃上げ、消費拡大を目指す方針だ。

 所得税は戦後長らく、終身雇用の会社員と専業主婦を標準モデルとして設計されてきた。しかし、バブル崩壊後の長期不況や人口減少による国内市場縮小で、企業は正社員採用を抑制。今や非正規社員は全就業者の4割に上る。一方で、インターネットの発達などから、会社に属さずに個人で事業を請け負う人も増えている。出産後も働き続ける女性も多くなってきた。今後はさらにこうした傾向が強まるのは間違いない。

 専ら会社員を対象にしてきた所得税制は前提が崩れかけている。税額を減額する控除の仕組みで問題が顕在化。現状では比較的高収入を得ている会社員が優遇され、個人で請負事業を営む人が不利になっている。与党税調は、会社員向けの給与所得控除と納税者全員が受けられる基礎控除を調整。高収入の会社員の負担を増やし、その分、フリーランスなどで働く人々の納税額を減らす方向だ。焦点は増税になる線をどこの所得層で引くかだ。年収800万~900万円の間で検討されている。

法人減税の効果疑問

 比較的高所得の層に負担を求めるのは理にかなっているが、この中には子育てや親の介護でお金が必要な世帯もある。線を引いてそれから上は一律に増税というのは乱暴だ。世帯の負担増を回避する丁寧な制度設計が不可欠だ。

 もう一つのテーマは企業に賃上げや設備投資を促す制度だ。3%以上の賃上げをする企業の法人税を軽減する方向で議論が進んでいる。上場企業は円安などの追い風で18年3月期に最高益を上げる見通しだが、業績の落ち込みに備えるなどとして、固定費の増加につながる賃上げには腰が引けている。国内市場の縮小から設備投資にも消極的だ。このため余剰利益が企業内にとどまり、人々の可処分所得が増えず、消費も伸びない。

 税制でこの悪循環を断とうとの思惑だが、企業は税制だけで投資判断をするわけではない。これまでも法人税率は下がってきたが、賃上げは進んでこなかった。経営者を動かすには、賃上げと投資コストを大きく上回る規模の減税とすることが前提になるだろう。

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