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座間事件

2017年11月10日
◆ネットに潜む悪意許せない◆

 神奈川県座間市のアパートの一室で9人の切断遺体が見つかり、死体遺棄容疑で逮捕された27歳の男は、ツイッターで「死にたい」とつぶやいた女性たちに「一緒に死のう」と返信し、次々に誘い出したという。信用させて部屋に招き入れるのは、それほど難しくなかったようだ。8月下旬からわずか2カ月余りの間に凶行を重ねていた。

自殺の投稿あふれる

 警察は身元を確認できた東京都八王子市の23歳女性を殺害した疑いで近く再逮捕する。ほかに福島、群馬、埼玉の3県に住む15~17歳の女子高生3人や埼玉県の19歳女子大生、神奈川県の男女2人など女性7人と男性1人が犠牲になったとみられ、犯罪史上まれに見る残忍な事件となった。

 近年、会員制交流サイト(SNS)のツイッターは一緒に自殺する人を募ったり、自殺の方法などで情報交換したりする投稿であふれている。ハンドルネームと呼ばれる仮の名前を登録して、人目を気にせず書き込める。それをきっかけに知り合った人と直接メッセージをやりとりすることもできる。そこに男の悪意が潜んでいた。

 そもそも自殺願望のつぶやきはどこまで本気か分からない。表現の自由との兼ね合いもあり、規制には難しさがつきまとう。といって、インターネットに巣くう悪意を放ってはおけない。社会全体で、より精緻なチェックと相談・救済の仕組みを整える必要がある。

 かつてネットに「自殺サイト」がはびこり、社会問題化した。2005年には4カ月の間に投稿した男子中学生ら3人が「一緒に自殺しよう」と次々に誘い出され、殺害される事件が起きた。殺人罪などに問われた男は死刑が確定し執行された。さらにサイトで硫化水素を発生させ自殺する方法が紹介され、08年から各地でこの方法による自殺が急増。警察やネット事業者が連携して削除や閉鎖を進め、サイトは下火になった。

求められる対面支援

 ところが、そこにあふれていた書き込みはSNSに流れ込み、増え続けている。しかもツイッターなら複数の人が閲覧できるが、やりとりがLINE(ライン)など無料通信アプリによる一対一の場に移ると、外部の目は行き届かない。身近に相談相手がおらず、死にたいというより、誰かに悩みを聞いてほしいと思って、自殺願望を書き込む人も少なくない。そこへ相談に乗ってくれそうな返信が届くと、信用してしまうという危うさがある。

 今回の事件を受け、米ツイッター社の日本法人は「自殺や自傷行為の助長や扇動」を禁じるとのルールを追加した。政府も「ネット上でどういった対応ができるのか考えたい」としている。一方で、電話やメールなどで自治体、民間団体に寄せられる膨大な相談を一時的なやりとりに終わらせず、専門家による対面支援につなげていく努力も欠かせまい。

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