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ノーベル平和賞

2017年10月12日
◆「核の傘」からの脱却目指せ◆

 ノルウェーのノーベル賞委員会が2017年のノーベル平和賞を、スイス・ジュネーブに拠点を置く国際非政府組織(NGO)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に授与すると発表した。最大の授賞理由は、122カ国・地域の賛同を得て国連本部で今年7月に採択された核兵器禁止条約を強力に推進したことだ。

被爆者の活動も貢献

 条約は核兵器の開発や保有、使用、核による威嚇などを包括的に禁じた初の国際法で、広島、長崎の被爆者との二人三脚が実を結んだ。条約は50カ国以上の批准により、来年にも発効する見通しだ。

 ICANは核兵器廃絶を目指して07年にオーストラリアで設立されたNGOの連合体で、平和や軍縮、人権といったテーマに取り組む約470団体が構成。日本のNGOピースボートも主要運営団体の一つで、共同代表の川崎哲氏は中心メンバーとして被爆者らと連携し条約交渉を下支えしてきた。ICANは、壮絶な被爆体験を糧に「反原爆」「非核」の思想を世界に伝えた被爆者の哲学を体現しており、授賞は被爆者の長年の尽力と多大な貢献に対するねぎらいでもある。心から祝福したい。

 核兵器禁止条約の採択は、米ロ関係悪化に伴う近年の核軍縮の停滞、インドとパキスタンの核軍拡競争、北朝鮮の核開発に象徴される核拡散の脅威、核物質増産が招来する核テロの危険性増大といった、現代的な「核リスク」の顕在化を反映している。核拡散防止条約で義務付けられた核軍縮努力を米ロなどが怠っている現状への強い不満と深い憂慮も背景にある。

日本政府への警鐘だ

 ICANはメキシコやオーストリアといった核廃絶推進国と協働し、核使用のもたらす「非人道的な結末」をキーワードに国際的な世論や各国政府を喚起、条約採択の下地を数年がかりで築いてきた。また今回の授賞決定は、被爆国でありながら、核兵器禁止条約に背を向け続ける日本政府に対する警鐘と受け止めるべきだ。

 安倍晋三首相は北朝鮮の核・ミサイル開発を主な理由に、トランプ米大統領に「核の傘」供与の確約を要求。2月の首脳会談では「核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」との共同声明をまとめた。核の傘を重視する日本政府の安全保障戦略が条約加盟を妨げる要因となっている。核廃絶を希求する被爆者と反核世論を無視する判断で、核軍縮・不拡散のリーダーとしての被爆国日本の国際的地位を傷付けた。

 北朝鮮が核ミサイル開発を急ぐのも米国に対する核抑止力の構築を目指しているためであり、「絶対悪」である核兵器に過度に依存する日米の同盟戦略が悪循環を招いている恐れがある。平和賞を機に米核戦力への依存を低減し、将来的に「傘」からの脱却を目指す構想を日本政府に強く促したい。

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