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重力波発見にノーベル賞

2017年10月6日
◆国際協力発展させる成果だ◆

 強い重力であらゆるものをのみ込む天体、ブラックホール。それが二つ、互いの周りを猛スピードで回り、合体する。時空のひずみが生まれ、さざ波のように光の速さで広がっていく。約13億年かけて宇宙を旅してきた時空のさざ波は2015年9月、米国の南部と西部に約1900キロ離れてつくられた2基の重力波望遠鏡「LIGO(ライゴ)」によって見事に捉えられた。アインシュタインが1916年に存在を予言した重力波。初めての直接観測を成し遂げたLIGOの生みの親である米国の研究者3人に今年のノーベル物理学賞が贈られることになった。

日本の貢献も生きる

 質量を生みだす源となるヒッグス粒子の発見に続く今世紀の物理学の大発見で、日本からの貢献もあった。受賞を共に喜びたい。

 予言から発見までは紆余(うよ)曲折があった。アインシュタイン自身がそうだった。自らの一般相対性理論を元に予言したものの、20年後には存在を否定する論文を書く。投稿先の学術誌の指摘で誤りに気付き、存在を認める内容に直して事なきを得た。69年、米国の研究者が重さ1・4トンのアルミニウム製円筒を使う装置で重力波を捉えたと発表、70年代に日本を含む各国で追試が進んだ。結局、重力波は見つからず幻と消えてしまう。

 意気消沈する研究者を力づけたのは、重力波の存在を間接的に示す天文学の発見だった。高密度の天体である中性子星のペアが互いを回る周期は次第に短くなるという発見で、重力波がエネルギーを持ち出しているためと考えられた。重力波望遠鏡の開発が欧米で本格化、日本でも80年代後半から名古屋大学長だった早川幸男氏が中心となり組織的な研究が進んだ。

組織的研究積み重ね

 今世紀に入り、米国のLIGO、欧州ではイタリアにつくられた大型の重力波望遠鏡VIRGO(バーゴ)が観測を始めた。日本では岐阜県にある東京大宇宙線研究所の「かぐら」が現在、観測開始に向けて準備を進めている。

 資金難で欧米が先行するが、日本が積み重ねた研究はLIGOにも生かされている。実は欧州も含め全ての重力波望遠鏡は、競争しつつも協力し合うことを前提としてつくられてきた。壮大な夢の実現にふさわしい研究の在り方といえる。かぐらの観測が始まれば重力波を出す天体の位置がより正確に分かるようになり、光や電波では見えない宇宙の姿を探る「重力波天文学」が発展しそうだ。

 重力波望遠鏡はインドにも建設される。欧州と米国は宇宙で電力波を観測する計画に向け、試験衛星を打ち上げた。日本では、観測衛星を使って宇宙誕生直後に出た重力波を捉える計画が検討されている。日本単独での実現は難しそうだ。ならばアジア全体で目指してはどうか。研究を通じて交流が進めば緊張を緩める一歩になり得る。広い宇宙に、たった70億人の人類。助け合わない手はない。

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