ホーム 社説

衆院選と憲法

2017年10月5日
◆改憲前提に陥っていないか◆

 日本国憲法の施行から70年の年に行われる今回の衆院選は、その改正論議の重大な岐路となる。一つの焦点は、憲法改正に前向きな勢力が国会の改憲発議に必要な「3分の2以上」の議席を維持するのかだ。選挙結果は改憲論議の行方を大きく左右しよう。

 憲法は国の基本理念を定めるものだ。憲法に関する議論は将来の国家、社会像を土台に行われるべきで、「改憲ありき」に陥ってはならない。どの政党、候補者が憲法論議に真摯(しんし)に向き合い、理念を語るのか。姿勢を見極めたい。

前のめり目立つ首相

 自民党は改憲に強い意欲を示す安倍晋三首相の下、第2次政権での国政選挙では初めて公約の柱に改憲を明記した。首相が提起した9条への自衛隊明記や教育無償化、緊急事態対応、参院選「合区」解消の4項目に関し「党内外の十分な議論を踏まえ」「初めての改憲を目指す」と盛り込んだ。だがいずれの項目も自民党内の議論が集約されていない。衆院選の結果、安倍政権が継続すれば、首相は国民の「信任」を得たとして改憲4項目に関する議論を加速させる構えだろう。

 それ以前に、憲法に対する首相の姿勢を問わねばならない。2012年の政権復帰後、まず改憲発議の要件を緩和する96条改正を提唱。その後、憲法解釈変更という手法で、違憲とされてきた集団的自衛権行使を解禁する安全保障関連法を制定した。

 今年5月の憲法記念日には、20年までの改正憲法施行を目指すと表明。戦力不保持を定めた9条2項を維持したまま自衛隊を明記するという、党内でも議論されていない「加憲案」を提起した。

主張の対立軸は9条

 目指す条項が次々と変わるのは、改憲自体が目的と化しているからではないか。憲法は国家権力を縛るという「立憲主義」を最高権力者がないがしろにしてきた。選挙の争点の一つは、その姿勢への評価と言える。

 各党の主張の対立軸はやはり9条になる。与党の公明党は9条改正には慎重な姿勢。野党の日本維新の会は公約に9条改正を明記した。一方、「改憲勢力」を明言する新党「希望の党」代表の小池百合子東京都知事は9条論議先行には慎重で、第8章の「地方自治」の条項改正などを主張。民進党からの合流者を「憲法観」を基準に選別し、第1次公認候補を発表した。選別に反発する民進党前議員らで「立憲民主党」を結成した枝野幸男氏は首相の解散権を制限する改憲案などを主張してきた。一字一句変えないという「護憲」ではない。共産、社民両党は改憲に反対する。

 国会の憲法審査会では各党がこうした見解を示し、改憲の必要性で合意が可能か議論を積み重ねてきた。その流れが解散で断ち切られた。だが選択をせかす動きに惑わされず、訴えをじっくりと読み解きたい。憲法が定める主権者は私たちだ。

このほかの記事

過去の記事(月別)