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NHKのネット配信

2017年9月9日
◆視聴者の理解が得られるか◆

 NHKがテレビ番組を放送と同時にインターネットで配信する準備を急いでいる。NHK会長の諮問機関は、この同時配信をスマートフォンやパソコンで視聴する世帯から受信料を徴収することを肯定した。テレビを持たない世帯にも受信料を課すというわけだが、視聴者の理解を得られるか。国民的な議論が不可欠である。

公共放送の役割拡大

 NHKの業務は放送法で限定されており、現在は同時配信は認められていない。受信契約の対象はテレビのある世帯だ。スマホなどが普及し、1人暮らしの若者を中心にテレビのない世帯が増えていることから、NHKはネットへの進出を希望。法改正を経て2008年、放送済みの番組を有料でネット配信するサービス「NHKオンデマンド」を始めた。

 昨年12月には、総合テレビと教育テレビの全番組を19年から同時配信したいと表明。上田良一会長が委嘱した有識者による「NHK受信料制度等検討委員会」(座長・安藤英義専修大大学院教授)は今夏、同時配信だけでNHKの番組を視聴する世帯からも受信料を集めることに「一定の合理性がある」と答申した。正確な情報で人をつなぐという公共放送の役割を、通信にも拡大するべきとの考えだ。

 ただし、スマホなどは番組の視聴以外にも使われる。検討委は、NHKの同時配信を視聴できるようにするため、アプリのダウンロードやIDの取得といった手続きを取った場合に限り、受信契約対象とすることを提案した。既にテレビの受信料を支払っている世帯は、追加負担なしで同時配信も見られるようにするという。

受信料徴収に課題も

 NHKの世論調査によれば、同時配信を「利用したいとは思わない」との回答が過半数を占めた。昨年、試験的に実施した同時配信の利用者も6%にとどまった。ニーズが強いとは言いにくく、毎年数十億円と試算される費用を投じて踏み切るべきなのか。

 さらに、同時配信で手続きを取った場合のみ受信契約を求めるなら、放送でもNHKを見たい人だけ受信料を支払う、つまり見ない人は払わなくてもよいことにしなければ一貫しない。最近のテレビはネット接続が可能で放送以外の動画やサイトを閲覧できる。テレビがあるからといって放送を視聴しているとは限らない。同時配信を開始するには、こうした疑問に答えなければならない。

 総務省はNHKに「三位一体の改革」を要求してきた。(1)業務範囲をどこまで広げるか、狭めるか(2)それに相応した受信料制度をどうするか(3)不祥事が続く中、ガバナンス(組織統治)をどのように是正するか。NHKは近く、同時配信についての具体的な計画を示すという。幅広い議論の土台となるよう、分かりやすい公共放送の将来像を示してほしい。

 

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