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知る権利と公文書

2017年7月8日
◆政権による私物化を許すな◆

 安倍晋三首相の友人が理事長を務める「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画を巡り週明け、前川喜平前文部科学事務次官を参考人として呼び、衆参両院で閉会中審査が開かれる。通常国会閉会後に首相側近の萩生田(はぎうだ)光一官房副長官の発言を記録したとされる新たな文書が見つかり、野党は「加計ありき」が強まったとして攻勢を強める構えだ。首相は外遊中だが、菅義偉官房長官や松野博一文科相、山本幸三地方創生担当相が出席する。

公開範囲狭める動き

 加計学園問題などで政府が説明に背を向けたことに不信や怒りが噴き出し、東京都議選で自民党は惨敗した。首相と閣僚はそろって「反省」や「丁寧な説明」を繰り返し、自民党も野党の要求をのまざるを得なくなった。

 しかし首相らの「反省」は本物か。政府の動きを見ると、どうも疑わしい。菅官房長官が情報公開の対象となる行政文書の判断基準見直しに言及。公開範囲を狭める方向に持っていこうとしている。

 文科省は不適切な文書管理を理由に次官らに厳重注意した。締め付けが強まりつつある。だが行政文書などの公文書は民主主義社会で国民の「知る権利」に応え、主体的な判断を可能にする貴重な財産であり、時の政権がそれを私物化するようなことは許されない。

 文科省は先月15日に「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っている」など内閣府側の発言を再調査で確認したとして発表。20日には萩生田氏と文科省幹部とのやりとりをまとめた文書が出てきたと明らかにした。

 「総理は『平成30(2018)年4月開学』とおしりを切っていた」「官邸は絶対やると言っている」などが萩生田氏の発言として記され、当初の内閣府対文科省の構図に加え、新たに首相官邸の関与が焦点になっている。

個人メモでも対象に

 文科省は国会閉会後に出てきた「萩生田文書」について、萩生田氏とやりとりした職員がまとめ、誤って課内の共有フォルダーに入れた「個人メモ」で「正確性を欠く」とした。その上で、本来は共有フォルダーに入れる公式文書ではないことや流出したことを理由に次官ら3人に口頭で厳重注意した。

 菅官房長官による行政文書の基準見直し発言に沿って、個人メモを保存・公開の対象から外そうという意図が見て取れる。しかし「国などの諸活動を国民に説明する責務を全うする」という公文書管理法の目的に照らせば、個人メモといえども立派な公文書である。

 森友学園問題で財務省は国有地売却を巡る学園側との交渉記録を省内規則により廃棄したとして説明を拒み続けた。いま考えるべきは、政策決定過程の検証に必要な公文書をどうすれば、きちんと残せるかであり、政権に不都合な情報漏れをいかに防ぐかではない。

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