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通常国会閉幕

2017年6月20日
◆民主主義の危機招く運営だ◆

 法案審議は真摯(しんし)に行われたか。指摘された疑惑の解明に取り組んだのか。日本の将来に関わる本質的な課題は議論されたのか-。閉幕した通常国会を振り返ると、いずれにも及第点は付けられない。

 150日の会期中に安倍政権が示したのは、議論に真正面から向き合わず、議会のルールを軽視し、数の力で押し切る強権的な国会運営だった。

 政権は選挙を通じて有権者に選ばれる。ただし選挙は白紙委任ではない。野党の後ろにはそれを支持する有権者がいることを認識し、少数意見を尊重するならば、政権は権力の行使に抑制的に振る舞うのが当然だろう。数の力による政治は、議会制民主主義の深刻な危機を招いている。

法律の懸念払拭せず

 象徴的な場面は、委員会に臨む安倍晋三首相の態度に表れていた。森友学園と加計学園の二つの学校法人を巡る疑惑に関し、野党の指摘に対して真正面から答えず、「印象操作だ」と繰り返した。

 共謀罪の構成要件を取り込んだ組織犯罪処罰法改正案の委員会質疑では、答弁しようと挙手した金田勝年法相を首相が制し、官僚に答弁させた。信じがたい光景だ。

 審議の中身はどうか。「共謀罪」法案について、首相は参院審議前に「丁寧で分かりやすい説明を心掛ける」と述べていた。しかし金田法相の答弁は最後まで不安定で、法律に対する懸念を払拭(ふっしょく)できたとは言い難い。その揚げ句、延長できる会期を延ばさずに、委員会での採決を省略し本会議採決を強行した。法案を委員会で審議する「委員会中心主義」をとる日本の議会制度の否定である。

 森友学園や加計学園を巡る疑惑は、首相に近い人脈に異例の優遇措置が取られたのではないかという政権中枢に直結する問題だった。だが政権は真相解明に後ろ向きの姿勢に終始した。加計学園関係の文書再調査は会期末になってようやく行った。

再考すべき統治体制

 国会軽視はこれにとどまらない。2020年までの憲法改正施行を目指すと表明した首相の発言は、衆参両院の憲法審査会で積み上げてきた議論を無視したものだ。

 天皇陛下の退位を実現する特例法などが成立したものの、多くの時間が疑惑を巡って費やされたのは残念だ。財政再建や社会保障制度の在り方など、本来取り組むべき課題の議論は今国会でも置き去りにされた。

 1990年代からの「政治改革」が目指したのは、時代の変化に対応できる統治体制の構築だった。強い政権基盤をつくる小選挙区制を柱とする選挙制度の導入や、首相の権限を強化する行政改革はそのための方策だ。

 しかし招いたのは、政権が数の力で押し切り、与党内からも異論が出にくいという閉塞(へいそく)的な状況である。政治改革から20年以上が経過した。統治体制の在り方を真剣に再考すべきだ。

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