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50の風味を持つ豚肉

2020年1月11日
 「食べられないのは鳴き声だけだ」と言われるほど捨てる部分はほとんどないのが豚である。頭の先からしっぽ、内臓、血液に至るまですべてを利用でき、その上、繁殖力が旺盛で、栄養価も高く、うまい。

 ローマ時代に成立した最古のレシピ集「アピキウスの料理書」にも素朴なものから豪華なものまで多彩な豚肉料理が載っていて当時の人たちが豚肉を好んで食べていたことがうかがい知れる(キャサリン・M・ロジャーズ著/伊藤綺訳「食の図書館 豚肉の歴史」)。

 今、聞こえてくるのは豚の悲痛な鳴き声と養豚関係者の悲鳴である。おととし9月に岐阜県で見つかった家畜伝染病の豚コレラ(CSF)に感染した豚が沖縄県でも確認された。ウイルス遺伝子の一部を調べた結果、特徴が岐阜、埼玉など本州で発生したものと一致した。

 海で隔てられた沖縄で発生したということは日本のどこに飛び火してもおかしくないということだ。本県へのウイルスの侵入を防ぐために水際対策や農場などの防疫レベルをさらにアップする必要がある。養豚関係者だけではなく県外から帰った人は陸空海の玄関口での消毒洗浄を徹底してほしい。

 博物学者大プリニウスの著書、博物誌に「豚は50近くの風味を持つ」とあるそうだ。確かに食卓の常連で毎日食べても飽きのこない豚肉である。口蹄疫に苦しめられた本県は牛豚の鳴き声の聞こえない畜産地帯の悲しさを知っている。悲劇を繰り返したくない。

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