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ソローの税金不払い運動

2019年12月15日
 19世紀のアメリカの作家で「森の生活 ウォールデン」の著者ヘンリー・D・ソローは、ある日の午後、靴屋に頼んでいた靴を受け取るために村へ出かけたところ逮捕された。容疑は「税金の不払い」だった。

 ソローは金を惜しんだわけではない。議事堂の真ん前で黒人奴隷を売り買いする国家の権威を認めたくなかっただけだった。そのため、たったひとりで奴隷制度に反対する「税金の不払い運動」を行っていた(木原武一著「大人のための世界の名著必読書50」)。

 自民、公明両党が新年度与党税制改正大綱を決定した。大企業がため込む現預金を競争力強化に向けた投資に回させるため税優遇策を新設し、第5世代(5G)移動通信システムへの設備投資も税制面で促す。消費税増税で負担の増した家計全般に恩恵が及ぶ項目は少ない。

 今年10月から消費税率8%と10%が混在する複数税率になった。3%で1989年に導入されて30年。じわりじわりと重みを増しながら食品など軽減税率が適用される品目を除いて1割に。買い物をするたびレシートに記載されているその分の少なからぬ金額を見て、ため息をつく人もおられよう。

 ベンチャー企業への出資にも、5G移動通信システムへの設備投資にも縁のない庶民が「貧者の一灯」として納める日々の消費税だ。政府の権威が形無しになるような議事堂での論戦や疑問符のつく税金の使い道には厳しい視線を注ぎたい。ソローのように。

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