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オンリーワンの夢

2019年12月13日
 早稲田大ラグビー部監督を務めた日比野弘さんは1986~87年に、家族を連れてイギリスに留学した際まざまざと日英のラグビー環境の違いを思い知らされたという。まさに「天と地」ほどの開きがあった。

 競技発祥地ラグビー校で寮生数700人に対するピッチの数を聞くと教師が「30ぐらい」と答えた。同校では日比野さんが学生に逆質問された。「早稲田大の学生数は」「4万5千人」「ピッチはいくつ」「たった一つ」(日比野弘著「早稲田ラグビー誇りをかけて」)。

 ラグビーW杯の日本代表がおととい、東京でパレードを実施した。沿道は推定5万のファンで埋め尽くされた。ラグビー人気が低迷した時期を知る田中史朗選手は黒山のファン、温かい声援に感極まって泣き、「これだけ集まってもらい、本当にうれしい」とコメントした。

 W杯前にこんな結果を予想した人は多くはなかった。一戦一戦勝ちを重ねるうちに、にわかファンが雪だるまのように膨らんでいった印象がある。ルールに精通している人も競技歴のある人もほんの一握りだ。このままでは、4年後の結果次第では盛り上がった人気もしぼんでしまう可能性がある。

 日本代表のスローガンで英語数詞の「ワン」が脚光を浴びたが、日本では専用ピッチが「たった一つ」でもあれば恵まれている。イギリス並みは無理でも多くの子どもがラグビーを楽しめる環境を整えたい。国民がワンチームになって再び同じ夢を見るために。

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