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処世術にアブダクション

2019年12月12日
 アブダクション。新しい言葉と思っていたが、10年以上前の広辞苑に載っている。「哲学者のパースが提起した科学的探究の方法」で「未解明の現象の中に仮説的な法則的秩序を見い出す発見的方法」とある。

 事件の捜査においては現象を徹底的に観察し、その上で仮説を立て、論理的に構成して解決する科学的考察方法となる。みやざきアートセンターで開催中の「名探偵コナン 科学捜査展~真実への推理(アブダクション)~」では、その方法の一端に触れられる。

 風貌は子供だが大人びた冷徹な推理で難事件を次々解決するコナン。大人までとりこにする魅力は本格的な推理サスペンスにある。連載漫画やテレビでの人気を裏付けるように会場は親子連れなどでいっぱい。コナンと一緒に事件を調べる追体験型の特別展となっている。

 マンションの一室で女性作家が殺された設定。探偵になった気分で現場検証から聞き込み、科学鑑定と展示ブースを回る。DNAや指紋など最先端の科学鑑定が優しく解説されていて、現実の事件解決にも大いに役立っていることが分かった。科学鑑定は必須だが、それだけでは十分でないことも。

 鑑定結果を踏まえ、ひらめきや想像力を働かせて、脳裏に真実という像を結ぶ作業が欠かせない。インターネットに真偽が定かでない情報があふれる昨今。アブダクションは哲学や捜査だけでなく、混迷する世の中を生き抜く処世術として有効かもしれない。

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