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大根やぐら

2019年12月6日
 ボストンのセイラム・ピーボディー博物館に収蔵されているE・S・モースのコレクションに、2本の大根を交差させた看板があるそうだ。日本の八百屋のもので売り物を表しただけのようだがそうではない。

 歓喜天の紋としても知られ、男女が結ばれることや幸せなど祈願する絵馬として奉納されることもあるデザインという。単なる八百屋の目印にとどまらずさまざまな願いが込められた看板の意匠は「違い大根」と呼ばれる(船越幹央著「日本を知る看板の世界」)。

 本県の冬の風物詩、やぐらへ大根を干す作業が宮崎市田野町で始まった。生産者は大根を鰐塚山から吹きおろす冷たい風で2週間ほど乾燥させ、漬物用として出荷する。高さ6メートルほどのやぐらに手作業で大根を掛けるのは重労働だが今年は豊作で、生産者の表情は明るい。

 振り返ってみれば去年は干し大根農家と地元の漬物業者にとっては大変な受難の年だった。9月末の台風24号で種が流れて全滅状態に。台風25号が過ぎるのを待ってまき直したが当然、収穫は大幅に遅れた。年内に出回るはずの新物たくあんの製造にも響いて、十分に供給することができなかった。

 遠目に目立つ大根やぐらは、風と太陽光で大根のうま味を増す伝統的なたくあん作りをアピールする大看板だ。干す手間をかけた大根と干さずに塩漬けした大根を素材に作るたくあんは食感が違うという。違いにこだわる人がいて守られる師走の風景である。

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