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ひい、ふう、みい、よ

2019年12月2日
 やはらかき ふるき日本の言葉もて 原発かぞふ ひい、ふう、みい、よ。若山牧水賞を受賞した高野公彦歌集「天泣(てんきふ)」に収録されている一首。むかしの数詞をつぶやき、指を折りながら原発を数える作者だ。

 わが国の原子力発電所が立地された場所を示す地図に着想を得た作品だろうか。先月中旬に訪ねた北陸の福井県には経営陣の金品受領問題が発覚した関西電力のものを中心にひい、ふう、みい、よ、いつ、むう、なな…と折る指が両手では足りない原発があった。

 晩秋のかの地で、都道府県幸福度が話題になった。福井は2018年版ランキングで14、16年に続き日本一。働く場があって、子育て支援が充実していることなどが理由だが原発マネーを活用した”ハコモノ”が整っていることも影響しているかも、と地元の人に聞いた。

 だが原発に依存しない将来図も描く。昨年度、過去最高の94万人が来館し、本年度はさらに記録更新が確実視される県立恐竜博物館も地域浮揚に寄与する。福井市の南東にある一乗谷(いちじょうだに)朝倉氏遺跡も大きな可能性を秘める。400年以上も土の中に眠っていた戦国時代の都市を近年、発掘・復元した。

 恐竜にせよ戦国遺跡にせよ土中から掘り出して、未来の糧にしようという北陸の人のしたたかさに脱帽する。今を生きる人たちばかりではなく子、孫世代も幸せになれる地域振興策ならばひい、ふう、みい、よといわず折る指が足りなくなるほどあっていい。

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