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カブトガニ死の舞踏

2019年11月20日
 先週、福井県勝山市の県立恐竜博物館を訪ねた。日本における「恐竜の聖地」といっていい施設だ。展示されている実物の化石を含んだカマラサウルス、アロサウルスなどの全身骨格標本の数に圧倒された。

 「恐竜の世界ゾーン」へいざなう地下1階には1億5000万年前のジュラ紀にいたカブトガニのはった跡の化石があった。はい跡は、壁画のような地層面を横断するように続き、最後にのたうつように乱れている。カブトガニはその場所でひっくり返り息絶えた。

 さて、生きた化石といわれるカブトガニ並みのしぶとさで安倍晋三首相の通算在職日数がきょう、戦前の桂太郎を超えて憲政史上最長となった。政権を奪還した2012年衆院選から国政選挙に6連勝。圧倒的な議席数をバックに揺るがぬ1強多弱体制を築いて達成した。

 同博物館主任研究員の寺田和雄博士はカブトガニの死因は脱皮に失敗したためだった可能性があると推定する。当時、浅い海だった地層には強い風や波などの痕跡はなく、他の生物と争った形跡もないという。博士の説が正解ならばカブトガニは自分の殻から抜けきれずに最期を迎えたことになる。

 閣僚の辞任や問題発言にもひっくり返るまでには至らず最長記録を打ち立てた安倍政権だ。有終の美を飾るため、いま一度かぶとの緒を締め直して一皮むけた指導者像を見せてほしい。本人もただ長かっただけの政権と後世に伝わるのは本意ではないだろう。

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