ホーム くろしお

お笑いと政治

2019年11月17日
 九州民俗仮面美術館館長高見乾司さん(西都市)が著書「九州の民俗仮面」の中で「道化」について「服属を強いられ、芸を強要される先住民の残像」という考察をしている。その典型例が「ひょっとこ」だ。

 日向市の夏祭りで主役になるなど県民になじみの存在。高見さんは、古代の製鉄に従事した「火男」にルーツを探り、狂言面の「うそふき」との類似性を指摘。「うそふきは体制にへつらわず、権力者を風刺する道化でもあり、それこそが狂言の神髄である」と記す。

 狂言は漫才やコント、落語などの源流とされる。いつも「お笑い」が反権力を貫いてきたわけではないが、芸人が時には危険も顧みず、権力者を風刺する時にこそ庶民が最も快哉(かいさい)を叫ぶのは時代を通して変わらない。宮崎平野の道化者「はんぴどん」もそういう存在だった。

 首相が主催する「桜を見る会」の映像で、お笑い芸人が安倍首相の前でも芸を披露している姿に違和感を覚えた人は少なくないのではないか。この会については来年の中止が発表され、次から次へと問題点が指摘されているが、別の視点から、芸能と政治の間合いについてもあえて苦言を呈したい。

 というのも最近、政府系のイベントに芸能事務所が積極的に関わる例が目立つからだ。政治との関わりも時にはあろうが、権力者とは適切な距離を保ってこそお笑いのプロと思う。個々の芸人を責めたくはないが、ただのたいこ持ちに堕する姿は見たくない。

このほかの記事

過去の記事(月別)