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見事に生きる

2019年11月13日
 紅葉を見に五ケ瀬町から椎葉村へ続く古道「霧立越(きりたちごえ)」を歩いた。かつては熊本と椎葉を結ぶ交易ルート「駄賃付け」の道。まさに霧から浮かぶ尾根伝いの道が発達したのは、険しい谷沿いを避けたためだろう。

 ブナの大木はあらかた散ったが、カエデやシイ、カシの葉は鮮やかに陽光が透けて見える。意外にホオの木の大きな葉は枝に残っていて、木によって葉の寿命が違うものだと妙に納得。落ち葉を踏みながら、人の生と死を考えさせられた最近の出来事を振り返った。

 一つは宮崎市のホテル会議場であった珍しい”生前葬”。まだ元気な女性だが、80歳を機に交流のあった人を大勢呼んで、お経を読み、戒名を披露した後はにぎやかなパーティー。「葬式にたくさん人が来ても私は会えない。生きているうちに別れを告げたいの」と話していた。

 もう一つは筋萎縮性側索硬化症(ALS)のため今年5月に44歳で死去したパーソナリティーS@KO(さこ)(迫田訓光)さんの追悼メモリアル映画「いのち」の上映会。家族やアナウンサー仲間らの回想で多くの人に愛された人柄、苦しくてもユーモアを忘れず、常に前向きに臨んだ闘病生活が伝わった。

 ALSの支援団体、主治医らのインタビューもあって病気への理解も深まる内容だった。S@KOさんは言う。「朝起きるたび生きていることに感謝する」。「見事に生きる」ということは一日一日を大切に過ごすこと。秋の深まりとともにかみしめている。

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