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ぼくのお姉さん

2019年11月5日
 主人公は小学校5年生の男の子。ダウン症で、知的障害のある17歳の姉は1カ月前から福祉作業所で働いている。その姉が朝、出かける前、パパや弟に「ああくてって(早く帰って来てね)」とお願いする。

 理由が分からないまま約束通り早めにパパが帰宅すると姉は両親、弟の手を引っ張るようにして近所のレストランへ。得意げな顔でメニューを広げ、一人一人に何を食べるか聞くのだった。児童文学者の丘修三が養護学校教諭時代に発表した「ぼくのお姉さん」。

 妊婦の採血という簡便な方法で、胎児の染色体異常の可能性を調べる新出生前診断の在り方について、厚生労働省が検討を始めた。医学系学会の自主規制により、厳しい条件下で行われてきた検査だが、条件を緩和する案を巡り、学会間で意見が対立したのがきっかけだ。

 検査には胎児の状態を早期に把握した上で、治療や支援などにつなげるという目的もある。しかし昨年9月までに診断を受け、胎児の染色体異常が確定した妊婦のおよそ9割が中絶したという事実は重く、「病気や障害のある子どもの存在を否定しかねない」「命の選別になる」と懸念する声は多い。

 姉の初給料は家族全員の食事代には全然足りなかったがパパもママもうれしくて泣き、弟は心優しき姉を誇りに思い悩んでいた宿題の作文にこう書き出す。「ぼくのお姉さんは、障害者です」。新出生前診断の議論に参加するすべての人に読んでほしい一冊。

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