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即位礼と雨宿り

2019年10月22日
 紀元前221年。秦の始皇帝が群雄割拠の混乱状態にあった中国全土を統一した。始皇帝は泰山という霊山に登って、人間界の支配者になったことを天に報告する。そして儀式の帰路、激しい雨に見舞われた。

 地上世界に怖いものはない最高権力者も突然、降りだした雨にはかなわない。樹木の下に逃げ込んで風雨を避けたという。たまたまの雨宿りが歴史に残るのは始皇帝が後に、五大夫(ごたいふ)という官職をその木に授けたからだった(円満字二郎著「雨かんむり漢字読本」)。

 天皇陛下の「即位礼正殿の儀」がきょう、皇居・宮殿で執り行われる。中庭に装束姿の人が並び、平安絵巻さながらの光景が広がる予定だ。ただし装束や道具は雨に弱く、のぼり旗が風で飛ぶ恐れがあるため天候次第で、人の配置など変更を余儀なくされる可能性がある。

 台風19号の傷痕は癒えず行方不明者の捜索が続く。住宅被害を受けた人たちが泥の付いた家具類を運び出すなどの後片付けに追われる中、昨夜の天気図では列島周辺に台風20、21号が迫りつつあった。近年の台風は遠い場所にも容赦なく風雨をもたらす。また温帯低気圧になっても気を緩められない。

 国民を思う心を、上皇ご夫妻から受け継がれた令和の天皇陛下である。大切な儀式の空模様よりも被災地の人々がこれ以上、雨に打たれないことを願うお気持ちのはず。代替わりのハイライトを楽しみながら優しい心を共有して、助け合いたい私たちである。

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