ホーム くろしお

選手ファーストか

2019年10月21日
 つい先日、東京から来県したある会社役員と会食をする機会があった。2020年東京五輪のマラソンと競歩の会場が札幌市に変更されることに話が及び、彼が苦笑交じりに言う。「いやあ、参ったよ―」。

 皇居に近い彼の会社はマラソンのコースに面していた。実況中継となると、社屋がテレビに映るチャンスがある。そこで最近、経費をかけて社屋の外壁を一新したばかりという。なるほど、苦笑するしかないが、同様の当てが外れた会社は結構あるかもしれない。

 突然の変更は思いも寄らない方面に波紋を広げていることだろう。むろん最も動揺しているのは選手のはずだ。どんな環境変化にもある程度対応するのが長距離ランナーとはいえ、トップ選手ならコースを熟知し、イメージトレーニングも行う。それが一からやり直しだ。

 チケットがなくてもマラソンは観戦できる数少ない競技の一つ。注目度も高い。観戦する側にとっても寝耳に水だ。国際オリンピック委員会(IOC)は東京の気温が高過ぎることを理由とするが、そもそも8月を選んだ時点で障害は想定できた。「選手ファースト」とは違う思惑を勘繰ってしまう。

 東京都も一地方自治体。同じ地方の立場として、相談もなく上の方で勝手に進められれば怒るのはよく分かる。しかし本当の地方へ競技が分散したことは前向きにとらえたい。最高の走りができた、と選手が満足できるようにIOCは最善を尽くしてほしい。

このほかの記事

過去の記事(月別)