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笠智衆さんの老け役

2019年10月18日
 俳優の笠智衆(りゅうちしゅう)さんといえばおじいさん役が板についた銀幕のいぶし銀のような存在だった。30歳で小津安二郎監督から「一ぺん老けてみい」と言われ、50代半ばの役をもらい、その後、老け役専門になった。

 「東京物語」で70歳以上に見える老父を演じたときの笠さんは信じがたいことに実際の年齢は48歳だった。背を丸め、しわを作るため少し笑うなど工夫したが、小津監督から何度も「老けてない、老けてない」とだめ出しされた(遠藤周作「対談 生きる学校」)。

 宮日ネットリサーチで、県内に在住する50代の男女を対象に実施したアンケートで8割超が60歳以降も働く意思を持つことが分かった。ただし半数超が理由の中から「年金や貯蓄額に不安」を選び、「健康維持」「社会との接点を持ちたい」はそれぞれ3割に満たなかった。

 笠さんの相手役、妻を演じた東山千栄子さんは撮影時の実年齢65歳で、役の年齢と同じだったが、そんなことを知った上で映画を鑑賞しても年齢的に釣り合いの取れた夫婦に見える。笠さんは監督の指導に従っただけ、と謙遜するが「老け役」をものにするまでには大変な努力の積み重ねがあった。

 「何歳まで働くか」の回答には「働けるまで(生涯現役)」が3割近くいた。そういう人は総じて若いもの。笠さんのように無理やり老ける必要もなく少しでも長く、前向きに働く気持ちでいてほしい県民だ。今の60代70代は本当に「老けてない、老けてない」。

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