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トコが落ちる建築確認不正

2019年10月6日
 古代文学の比較研究を専門とする文学者の中西進さんが「日本人の忘れもの」という本で、日本の住居における床(とこ)の大切さを強調していた。「トコ」とは頑丈でびくともしない、絶対に変わらないものという。

 「とことわ」とか「とこしえ」のように、日本語でトコが悪いものに使われた例がない。理髪店を床屋と呼んだのも、髪を切る神聖な場だったかららしい。当然、住居では床の間が最も重要な場になるが、寝床も絶対に抜け落ちない保証があるからこそのトコだ。

 ユカと読んでも丈夫であるべきだが、抜け落ちそうで、とても横になれない床があったものだ。宮崎市の住宅メーカーが建設し、欠陥が次々見つかって問題となっている住居。フローリングがたわんで、剝がすとカビだらけだ。雨漏りや構造に強度不足の疑いも発覚した。

 市内で住居や事務所など数件を建設したものの、市への建築確認申請をしていなかったことが判明。着手金を受け取ったまま、未着工となっている案件もある。市が県警に告発しているが、業者は破産手続きに入っており、欠陥だらけでも住居に住み続けざるを得ない被害者らは途方に暮れている。

 住宅ローン減税の対象外となり、国の補助金も受けられないなど金銭的な苦境も深刻。もっと早い時点で行政の指導があれば違っていたのではと疑問が残る。「住んでこそ楽しい」がモットーの本県で、住宅事情のトコが落ちる信用失墜があってはならない。

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